作業療法士とは?仕事内容・資格・活躍の場

作業療法士の仕事
掲載日: 2025.07.21
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1. 作業療法とは?  

①作業療法とは?

作業療法は、日常生活の中で行う「作業」を通じて心と体の機能を回復させ、個々の人がその人らしい生活を送れるよう支援するリハビリテーションの一分野です。「作業」とは、食事や入浴といったセルフケア、掃除や料理などの日常生活の家事、仕事や余暇活動、地域活動までを含む広範囲の行為を指します。この「作業」を活用し、人々の健康や生活の質(QOL)を向上させることを目的としています。

日本作業療法士協会は、作業療法を以下のように定義しています:

作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。

例えば、高齢者が自分で服を着替えられるよう支援したり、脳卒中で片麻痺になった人が再び料理を楽しめるようサポートしたりすることも含まれます。こうした「作業」は、人と社会をつなぐ大切な「接点」となり、その人が自立した生活を送る基盤となります。

②どんな人が作業療法の対象になるの?

作業療法の対象者は幅広く、年齢や障害の種類を問いません。以下のような人々が対象となります。

  • 心の問題を抱える人
    統合失調症や気分障害、うつ病、不安障害などの精神疾患を持つ方が対象です。日常生活や対人関係での困難に対して、創作活動や日常生活の訓練を通じて、精神機能や対人能力の改善を目指します。アルコール依存症や神経症といった課題にも対応します。
  • 身体に障害を持つ人
    脳卒中後の麻痺や脊髄損傷、高次脳機能障害、パーキンソン病、リウマチ、骨折など、病気や事故によって身体に障害を負った方が対象です。日常生活の動作や仕事復帰を目指した訓練を行い、残存機能を最大限に活用することで、生活の質を高めます。在宅での生活環境の調整や、家族への指導も含まれます。
  • 発達に課題のある子ども
    発達障害(注意欠陥・多動性障害、ダウン症、学習障害、自閉症など)を持つ子どもたちに対して、遊びや創作活動を通じて運動機能や日常生活スキル、学習能力の発達を促します。家庭や学校での生活がよりスムーズにいくよう、社会的なスキルの向上も目指します。
  • 高齢期の課題を抱える人
    認知症や廃用性症候群(使わないことで機能が低下する症状)、骨や関節の障害を持つ高齢者が対象です。心身機能を維持・改善するための訓練に加えて、生きがいや社会的役割を取り戻す支援を行い、引きこもりなどの心理的な課題にも対応します。

2. 作業療法士とはどんな仕事?  

①作業療法士とは?

作業療法士(Occupational therapist: OT)は、リハビリテーションの専門家として、その人らしい生活を取り戻せるよう支援を行う職種です。医療、福祉、介護、教育などの現場で活躍し、患者一人ひとりの身体的・精神的状況や生活環境を考慮したうえで、個別にリハビリテーション計画を立てていきます。

作業療法士の最大の特徴は、「作業」を手段として用いることです。具体的には、食事やトイレといった日常的な行動から、仕事や趣味など社会的な活動まで、多岐にわたる「作業」を活用し、身体的・精神的な回復を図ります。

②作業療法士の仕事内容と役割

作業療法士の主な仕事内容は、以下の通りです。

  1. 基本的な動作能力の改善

    運動や感覚・知覚、心肺機能や認知機能など、心身の基礎的な機能の向上を目指します。たとえば、脳卒中後の麻痺改善や、筋力低下した人の体力回復を支援します。

  2. 応用的な動作能力の習得

    日常生活に必要な行動、たとえばトイレや入浴、家事、買い物などのスキルを再習得します。「自分でできる」を実感できるよう支援します。

  3. 社会的適応能力のサポート

    地域活動や就労の場への復帰を目指します。就労訓練や職場環境への適応支援を行い、社会の中で役割を持ち、自立した生活を送れるように支援します。

  4. 心理的サポート

    精神的な不安やストレスを抱える患者さまに対して、リラックスできる活動を提案したり、社会復帰への自信を持てるようサポートします。

  5. ご家族さまへの指導・助言

    本人だけでなく、ご家族さまが支援方法を学び、適切に関わることで、患者さまの生活の質を向上させます。

作業療法士の役割は、ただ身体機能を回復させるだけではありません。患者さまが再び地域や社会とつながり、自分らしい生活を送れるよう支援します。

3. 資格の取得方法  

① 養成校での学び

作業療法士になるためには、厚生労働省指定の作業療法士養成施設で必要なカリキュラムを修了する必要があります。養成施設には専門学校、短期大学、大学があり、修業年数はそれぞれ異なります。専門学校や短期大学は3年制、大学は4年制となっていますが、どの養成施設でも作業療法士国家試験を受験するための知識と技術を身につけられるカリキュラムが用意されています。高校卒業後、最短3年で国家試験を受験する資格を得ることができます。
養成校では、医学的な基礎知識や作業療法の専門技術を学び、実際の医療や福祉の現場で行う臨床実習を通じて実践力を養います。

② 国家試験の受験資格と試験内容

養成校で必要な課程を修了すると、作業療法士国家試験の受験資格が得られます。作業療法士国家試験は毎年2月下旬に実施され、合格発表は3月下旬に行われます。

【試験内容】

1. 筆記試験
マークシート方式で行われ、「一般問題」と「実地問題」の2つに分かれています。

  • 一般問題
    解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)、作業療法
  • 実地問題
    運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、作業療法

2. 口述試験および実技試験>

  • 重度視力障害者に対しては、筆記試験の実地問題に代わり、口述試験および実技試験が実施されます。
  • 試験科目は、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法

合格基準
国家試験の合格基準は、総得点の60%以上、および実地試験で35%以上の正解が必要です。合格率はおよそ80%で推移しています。

4. 作業療法士の活躍の場  

① 就職先

作業療法士の活躍の場は非常に幅広く、社会のさまざまな分野でその専門性を活かすことができます。主な就職先として、以下のような施設や機関が挙げられます。

1.医療分野

  • 一般病院:急性期から回復期、慢性期の患者さまに対し、身体機能や日常生活能力の改善を支援します。
  • 精神病院:統合失調症やうつ病の患者さまに対し、心理的サポートや社会復帰を目指したリハビリを行います。
  • クリニック:外来患者さまを対象としたリハビリ計画の作成や実施を行います。

2.介護分野

  • 介護老人保健施設:高齢者の生活能力向上を目指し、日常生活動作訓練を実施します。
  • 特別養護老人ホーム:機能低下の予防や生活環境の整備を通じて、高齢者の生活をサポートします。
  • デイサービスセンター:在宅高齢者が日常生活で必要な動作を維持・向上できるよう支援します。

3.福祉分野

  • 児童福祉施設:障害を持つ子どもの成長を支援し、社会参加に向けた能力の発達を促します。
  • 障害者施設:自立した生活や就労を目指した訓練や環境調整を行います。

4.教育分野

  • 特別支援学校:障害を持つ子どもの学習環境を整え、生活能力の向上を図ります。

5.行政・地域分野

  • 保健所や地域包括支援センター:地域住民の健康促進や疾病予防のための施策を支援します。
  • 職業訓練施設:障害を持つ方の就労を支援し、技能や知識の習得をサポートします。

6.その他の分野

作業療法士養成校で教員として働くケースや、行政機関で政策立案に携わる例もあります。また、民間企業での障害者雇用支援や、ヘルステック関連の開発など、活躍の場は多岐にわたります。

② 給与について

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、作業療法士の平均年収は約432万円とされています。平均月給は約30万円、年間賞与は約71万円です。給与は年齢や経験に応じて増加し、特に55~59歳の時期にピークを迎えます。この時期には役職手当やインセンティブが加わり、収入がより高くなる傾向にあります。

作業療法士は国家資格であり、その取得者のほとんどが作業療法に関わる職場で働いています。日本作業療法士協会の調査によると、全体の約87.8%が作業療法士として継続して職務に就いており、このデータからも作業療法士が安定した職業であることが分かります。

参考:
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html

5. 転職やキャリアアップのポイント  

① 関連資格を取得する

作業療法士としての専門性を高めるために、関連資格を取得するのは効果的な方法です。資格を取得することで、スキルアップやキャリアの幅が広がり、場合によっては資格手当が加算されることもあります。
作業療法士に関連する主な資格には以下があります:

  • 認定作業療法士
  • 専門作業療法士
  • 認定訪問療法士
  • 呼吸療法認定士

これらの資格は、より専門的な知識と技術を身につけたい方に適しています。たとえ資格手当がない場合でも、スキルアップが職場での評価や新たな就職先でのアピールにつながるでしょう。

② 役職を目指す

作業療法士としてキャリアを積み、役職に就くことで給料アップを目指す方法もあります。リハビリテーション科の主任や科長などのポジションに就けば、役職手当が加算され収入が増加します。
ただし、役職に就くことで責任が大きくなる点や、スタッフの業務管理や採用面接など業務範囲が広がる点も考慮する必要があります。自分のキャパシティや働き方を見直しながら、長期的なキャリアプランを立てることが大切です。

③ 転職を検討する

現在の職場で昇給が見込めない場合、転職は有力な選択肢です。転職先によっては、これまでの経験やスキルを高く評価され、より良い待遇で働ける可能性があります。特に、経験を積んでから転職を行うと、初任給の時よりも高い収入を得られるケースが多いです。

また、転職することで自分に合った職場環境を見つけ、新たなやりがいや充実感を得られることもあります。転職を視野に入れる際には、求人情報を定期的にチェックし、自分に合った条件の職場を探してみるのがおすすめです。

④ 社会の動向を見据えたキャリア展開

作業療法士の需要は超高齢化社会を迎える日本でますます高まると考えられています。また、活躍の場は医療分野だけでなく、福祉や地域、教育などさまざまな分野に広がっています。
例えば、地域包括ケアの重要性が高まる中、地域で生活する高齢者の支援や、児童福祉施設での子どもへの支援といった分野で新たなキャリアを築くことも可能です。さらに、社会の課題に対応するために、自ら起業し起業家として活躍する道もあります。

6. 理学療法士と作業療法士の違いについて  

理学療法士(PT:Physical Therapist)と作業療法士(OT:Occupational Therapist)は、どちらもリハビリテーションに関わる専門職ですが、サポートする内容や目的には明確な違いがあります。

①サポートの対象と目的の違い

理学療法士は、基本的な動作機能の回復を目的としたリハビリを行います。「立つ」「座る」「歩く」といった日常生活の基礎となる動作の維持や改善をサポートするのが主な役割です。筋力トレーニングや運動療法、物理療法(電気刺激や温熱療法など)を通じて、身体機能を改善し、自立した生活が送れるよう支援します。

一方、作業療法士は、その人らしい生活を送るための応用動作や社会適応能力の回復を目指します。「食事をする」「料理をする」「仕事をする」といった日常生活や社会生活に必要な動作の訓練に加え、精神的なケアも行います。患者さまが趣味や余暇を楽しむこと、生きがいを見つけることまでサポートする点が特徴です。

②活躍する場の違い

理学療法士は、主に病院やクリニック、リハビリ施設での活躍が中心です。さらに、スポーツや健康推進の分野でも需要があり、アスリートのトレーニングサポートや心臓リハビリテーションの領域でも活動しています。

作業療法士は、医療機関だけでなく、介護施設や福祉施設、就労支援事業所、児童発達支援センターなど、幅広い領域で活躍しています。また、精神科病院や特別支援学校での支援活動も多く、患者さまの心と体の両面からサポートする仕事です。

③リハビリのアプローチの違い

理学療法士は、身体の「構造」と「機能」にアプローチするスペシャリストです。筋力強化や関節可動域の拡大、姿勢改善など、体の機能そのものを直接改善するリハビリを提供します。

作業療法士は、日常生活に必要な「作業」に焦点を当てたリハビリを行います。例えば、料理や着替え、趣味活動など、患者さまが生活の中で実際に行う動作を訓練します。また、精神的な課題に向き合いながら、社会復帰や生きがいの実現を目指す点も作業療法士ならではの特徴です。

④どちらを目指す?

理学療法士は、身体機能を徹底的に改善し、患者さまの「痛みを取り除きたい」「運動能力を向上させたい」と考える方に向いています。一方、作業療法士は、患者さまの生活全体を支え、「その人らしい生活を取り戻したい」「精神面も含めて支援したい」という思いがある方に適しています。

参考:
一般社団法人日本作業療法士協会
https://www.jaot.or.jp/

7.転職活動とJobSoel(ジョブソエル)の活用  

医療・介護分野での転職には、専門の求人情報プラットフォームであるJobSoel(ジョブソエル)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

JobSoelでは、全国の医療福祉に関する職種の求人情報を検索できるほか、施設の雰囲気や具体的な取り組みを知ることができます。
新しい職場での働き方や成長のチャンスを具体的にイメージしながら転職活動を進められるので、安心して検討できますよ。
自分に合った職場を見つける一助として、ジョブソエルを活用してみてください。効率的に転職活動を進めるための心強いツールとなるでしょう。

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8.まとめ  

作業療法士は、心と体の両面から「その人らしい生活」を支える専門職です。医療・福祉・介護など幅広い分野で活躍でき、将来性も高い職種のひとつです。キャリアアップや転職を検討している方にとって、多様な働き方ややりがいを見つけやすい仕事です。自分の可能性を広げたい方は、ぜひ選択肢の一つとしてご検討ください。本コラムが、今後のキャリアを考える上での参考になれば幸いです。

 

 

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