視能訓練士とは?仕事内容・資格・働き方・将来性について解説

視能訓練士のお仕事
掲載日: 2025.09.11
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1.視能訓練士とは?  

視能訓練士(しのうくんれんし)(Certified Orthoptist:CO)とは、目の働きや視力に関する検査や訓練を専門に行う医療技術職です。1971年に制度化された国家資格で、眼科医療の現場に欠かせない存在です。

対象となるのは、乳幼児から高齢者までと幅広い年齢層にわたります。たとえば、視覚の発達が重要な幼少期には、弱視や斜視の早期発見と訓練を行い、適切な視機能の発達を促します。また、加齢にともなう視力や視野の変化に対しても、専門的な検査を通じて医師の診断や治療をサポートします。

視能訓練士は、視力や視野、眼圧、眼球運動など多岐にわたる検査を行うとともに、患者さまの状態に応じた訓練や対応を行う役割を担っています。そのため、専門的な知識や検査技術だけでなく、丁寧なコミュニケーションや観察力も必要とされる職種です。

また、近年では定期健診や生活習慣病予防の分野、視覚障害者への支援(ロービジョンケア)など、活躍の場が広がっている点も注目されています。医師と連携しながら、目の健康を守る重要な役割を果たしている職種といえるでしょう。

2. 視能訓練士の仕事内容

視能訓練士の仕事は、視機能の検査や訓練を通して目の状態を正確に把握し、眼科医による診断や治療を支えることです。対象となるのは乳児から高齢者まで幅広く、視覚の発達段階や疾患の種類に応じて対応が求められます。眼科医療において、検査の正確さは診断と治療の質に直結するため、視能訓練士の果たす役割は非常に重要です。

視能訓練士の業務は、大きく4つの分野に分けられます。

① 視能矯正

視能矯正とは、主に乳幼児に対して行われる弱視や斜視の矯正訓練のことです。人の視覚は、生まれてから8歳ごろまでに急速に発達するといわれており、この時期に視機能の異常が見つかれば、訓練によって改善が期待できます。年齢を問わず、症状によっては成人に対しても矯正訓練が行われることがあります。

具体的には、両眼の協調を促す「両眼視機能」の訓練や、眼の位置を調整する「眼位検査」、眼球の動きを確認する「眼球運動検査」などを通して、必要な矯正を行います。弱視のケースでは、視力が発達していない目を意図的に使うよう促すなど、医師の指示に基づいた訓練が計画されます。

② 視能検査

視能訓練士は、視力や視野、屈折などを測定する各種検査も担当します。眼科における検査は非常に多岐にわたり、それぞれの結果が医師の診断に直結します。

主な検査には、視力検査、屈折検査(近視・遠視・乱視の程度を把握)、眼圧検査、視野検査、眼底や前眼部の撮影・画像診断、角膜形状検査、電気生理検査、超音波検査などがあります。これらの検査結果は、眼科医が病気を診断し、治療方針を決めるうえで重要なデータとなります。

また、眼鏡やコンタクトレンズの処方に関する検査も担当する場合がありますが、これも医師の診療方針に沿って実施されるものです。患者さまの視生活に配慮し、適切なレンズ処方のための情報を提供することも視能訓練士の役割の一つです。

③ 健診(検診)業務

各種健診の現場、たとえば、母子保健センターが実施する3歳児健康診査、就学前の健康診断、成人の生活習慣病予防健診などで視覚に関する検査を行います。

子どもの場合は、斜視や弱視といった視覚の発達に影響を与える異常を早期に見つけることが目的です。一方で、成人や高齢者に対しては、加齢や生活習慣病に伴う視力の低下や眼病を早期に見つけるための検査を行います。

④ ロービジョンケア

視能訓練士の仕事は、視力の回復を目指すだけではありません。病気やけが、あるいは加齢などにより視力が大きく低下した状態(ロービジョン)になった方々に対し、日常生活の質(QOL)を維持・向上させるための支援を行うのが「ロービジョンケア」です。

視力回復が難しい方には、情報の視覚的な取得を支援する“視覚補助”が重視されます。視覚そのものを回復するのではなく、「見えにくさをどう補うか」という視点でサポートを行います。

支援の一例としては、拡大鏡や遮光眼鏡、拡大読書器などの光学補助具を使用してもらい、日常生活での不便を減らせるよう支援します。また、見えにくさが学業や仕事、生活全般にどのように影響しているのかを丁寧に聞き取り、一人ひとりに合った方法を提案します。必要に応じて、視覚リハビリテーション施設や支援機関とも連携を取ります。

3. 視能訓練士になるには?受験資格の取得方法  

視能訓練士になるには、国家試験に合格する必要がありますが、そのためにはまず受験資格を取得しなければなりません。受験資格を得る方法には、主に以下の3つのルートがあります。

現在、全国におよそ30校の視能訓練士養成施設があり、これらの学校で必要な知識と技能を身につけることで、国家試験の受験資格を得ることができます。

① 高校卒業後、視能訓練士養成施設で3年以上修業する
高校卒業後、指定された視能訓練士養成施設(専門学校など)に進学し、3年以上にわたって知識と技術を修得するルートです。

② 大学・短大・養成機関卒業後、養成施設で1年以上修業する
大学や短大、または看護師や保育士の養成機関で2年以上の課程を修了し、指定科目を履修していれば、視能訓練士養成施設で1年以上学ぶことで受験資格を得られます。

【指定科目】

  • 必修科目:外国語、心理学、保健体育、生物学、物理学、数学(統計学を含む)
  • 選択科目(以下から2科目):教育学、倫理学、精神衛生、社会福祉、保育

③ 海外での修了者で、厚生労働大臣が認定した場合
外国の視能訓練士養成校を卒業した方、または外国で視能訓練士に相当する資格を取得した方のうち、日本国内の養成校と同等の知識・技能があると厚生労働大臣に認められた場合は、受験資格が与えられます。

4. 視能訓練士国家試験について

国家試験は、毎年1回、2月に実施されます。

試験形式: マークシート方式、一般問題と臨床問題の合計150問
試験科目: 基礎医学大要、基礎視能矯正学、視能検査学、視能障害学及び視能訓練学

5. 視能訓練士の就職先について

主な勤務先は医療機関ですが、教育機関、研究施設、行政機関、企業などもあります。高齢化やデジタル機器の普及により、目の不調を訴える人は増加しており、視能訓練士の専門的な知識や技術が求められる機会も増えています。

医療機関(病院・眼科クリニック)

視能訓練士の勤務先として最も多いのは、病院や診療所などの医療機関です。全体の約9割以上が医療機関に勤務しており、その中でも眼科診療所(以下、眼科クリニック)が約4割を占めています。

大学病院や総合病院では、内科・脳神経外科・小児科など他の診療科と連携しながら、糖尿病性網膜症や脳疾患に関連する視覚障害などの多様な症例に対応することがあります。

一方、地域の病院や眼科クリニックでは、小児眼科やレーシック手術、白内障・緑内障外来など、施設ごとに特化している診療分野があるため、扱う検査や訓練の内容もそれぞれ異なります。診療方針や対象とする患者層に応じて、視能訓練士が担う業務の範囲にも違いが出てきます。

また、施設の規模によっては、視能検査や矯正訓練に加えて、診療補助や事務作業を兼任するケースもあります。

集団健診・地域健診の現場

医療機関に所属しながら、地域の学校や企業、自治体が行う集団健診に関わる機会もあります。たとえば、3歳児健診、就学時健診、生活習慣病予防健診などで視力や両眼視機能の検査を担当します。

こうした健診は、斜視や弱視などの早期発見に加え、目の健康維持や全身疾患の兆候を見つけるうえでも重要な機会となっており、視能訓練士の専門的な役割が求められる分野のひとつです。

大学・専門学校などの教育・研究機関

一定の臨床経験を積んだ後、大学や専門学校などの教育機関で教鞭をとる道もあります。視能訓練士の資格に加えて、教員免許が必要となる場合もあります。

また、大学の研究機関で眼科医療に関する研究に従事する視能訓練士もいます。高齢化や生活習慣病に伴う眼疾患の増加、近視進行抑制の取り組みなど、目に関する研究の重要性はますます高まっており、専門的知識を活かした研究活動にも期待が寄せられています。

その他の勤務先(リハビリ施設・保健所・企業など)

医療機関や教育機関以外にも、リハビリ施設や保健所、自治体の保健事業の一環として視能検査を行う場面でも必要とされています。

また、医療機器メーカーや医療系企業など、医療に関連する民間企業で働くケースもあります。視能検査機器や補助具の開発・販売において、現場の視点を持った視能訓練士の知識や経験が活かされる場面が多くあります。

6. 視能訓練士の働き方と給与

視能訓練士は女性が多く従事している職種で、2020年に公表された「視能訓練士実態調査報告書」によると、全体の約85%を女性が占めています。勤務形態は日勤が中心で、夜勤や当直がある職場は少ないため、仕事と生活のバランスがとりやすい勤務体制が整っている職種といえます。

収入面では、年齢とともに平均所得は上昇しています。2020年の同調査によると、20代で約313万円、30代で約393万円、40代で約460万円、50代で約561万円と、年代が上がるごとに増加しています。正規職員に限った平均年収は約424万円です。また、2010年の平均所得(約353万円)と比較すると、2020年は約379万円となっており、長期的にも緩やかな上昇傾向が続いています。

公益社団法人日本視能訓練士協会 視能訓練士実態調査報告書|2020年
https://www.jaco.or.jp/wp-content/themes/jaco_renew/assets/pdf/2020survey.pdf

7.視能訓練士の将来性と社会的ニーズ

高齢化にともなう視能訓練士の役割拡大

高齢化が進む日本では、白内障や緑内障といった目の疾患が増加しています。令和5年の厚生労働省「患者調査」によると、「眼及び付属器の疾患」の総患者数は約899.9万人でした。加齢による視機能の低下が進むなか、視力や視野の検査、矯正訓練を担う視能訓練士の存在は、今後さらに求められると考えられます。

デジタル機器と若年層の視覚トラブル

スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器の長時間使用により、目の疲れやかすみ目といった症状を訴える人が増えています。特に若年層では「デジタルアイストレイン」と呼ばれる目のストレスが問題となっており、学校健診などでの早期発見と対処が重視されています。

また、近視の進行抑制は国際的にも重要な課題とされており、世界保健機関(WHO)の報告では、2050年までに世界人口の約半数が近視になると予測されています。視能訓練士は、視機能の検査や指導を通じて、こうした視覚の健康維持に貢献できる職種です。

地域医療・福祉との連携の広がり

視能訓練士の活動は医療機関の中にとどまらず、地域医療や福祉分野との連携も広がりつつあります。たとえば、ロービジョン(視力が大きく低下した状態)の方への補助具の使い方指導、生活支援、視覚リハビリテーションへの協力などが挙げられます。地域包括ケアの中でも、視覚分野の専門職としての役割が期待されています。

厚生労働省 令和5年患者調査の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/kanjya.pdf

NHK ”超近視”時代コロナ禍でさらに
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/myopia/

8.視能訓練士のキャリア

視能訓練士としてのキャリアは、勤務先や業務内容によってさまざまな発展の方向があります。たとえば、小児眼科やロービジョンケア、白内障・緑内障などの疾患別外来を持つ施設で経験を積むことで、特定分野における専門性を高めることができます。また、臨床経験を活かして教育機関や研究分野に進む道もあります。

また、2020年の「視能訓練士実態調査報告書」によると、視能訓練士の6割以上が一度は職場を変えた経験があると回答しており、結婚・出産やライフスタイルの変化、キャリアアップのために新しい職場を選ぶ人も多くいます。転職は、自分らしい働き方や新たな成長の機会を得るための手段のひとつです。

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10.まとめ  

視能訓練士は、専門的な知識と技術で幅広い世代の目の健康を支えるやりがいのある仕事です。今後ますます需要が高まる職種でもあり、自分らしい働き方やキャリアを築ける可能性も広がっています。
今回のコラムが、視能訓練士という仕事を知るきっかけや、将来のキャリアを考える際の参考になれば幸いです。

視能訓練士についてさらに詳しく知りたい方は、公益社団法人日本視能訓練士協会の公式サイトもご覧ください。
https://www.jaco.or.jp/ippan/

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