病院で進むカスハラ対策強化|医療現場で起こりやすい事例と職員を守るためのチェックリスト

経営・採用 看護師
掲載日: 2026.07.16
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はじめに:

「患者様だから強く言えない」
「クレーム対応は医療職の仕事」
そんな空気を、当たり前のように感じていませんか?

近年、病院や介護現場では、患者様やご家族からの暴言・威圧的な言動・過度な要求など、いわゆる“カスタマーハラスメント(カスハラ)””患者ハラスメント”が大きな問題になっています。

そして今、医療現場では「職員を守る体制づくり」が強く求められるようになってきました。

本記事では、医療現場で増えているカスハラの実態や、労働施策総合推進法によるハラスメント対策強化の流れを踏まえながら、病院運営において求められる対応についてわかりやすく解説します。

また、「今の職場では改善が難しい」と感じたときに利用できる公的相談窓口や、転職という選択肢についても紹介します。

 

 

1. なぜ今、病院でカスハラ対策が求められているのか

病院で働いていると、患者さんやご家族から強い言葉を受ける”患者ハラスメント ”は、決して珍しくありません。

例えば、

  • 「待ち時間が長い」と受付で怒鳴られる
  • 看護師へ人格否定のような発言をされる
  • 長時間の電話クレームを繰り返される
  • 土下座や過剰な謝罪を求められる
  • SNS投稿や口コミをほのめかして圧力をかけられる

といったケースです。

 

こうした言動自体は、実は昔から一定数存在していました。
医療現場では以前から、「患者さんも不安だから仕方ない」 「医療職なら耐えるべき」 「クレーム対応も仕事のうち」という考え方のもと、現場スタッフが個人で抱え込むケースも少なくありませんでした。

といった環境では、職員の身体への負担は大きく変わります。

 

ただ現在は、そうした行為が“カスタマーハラスメント(カスハラ)”として明確に問題視されるようになっています。
「昔はなかった問題」というより、“これまで見過ごされてきた問題が表面化した”という側面が大きいのです。

背景には、労働施策総合推進法によるハラスメント対策強化があります。
同法では企業に対し、従業員が安心して働ける環境づくりが求められており、近年はカスタマーハラスメントへの対応も重要な経営課題として位置づけられています。

 

患者・家族側の期待値が高まっている

現在はインターネットやSNSで医療情報を簡単に調べられる時代になり、ウェブサイトや口コミから事前に得た情報から「ネットにはこう書いてあった」「すぐ診てもらえると思った」など、医療機関への期待値が高くなる傾向があります。

一方で、医療現場は慢性的な人手不足や業務逼迫が続いており、すべての要望へ即座に対応できるとは限りません。そのギャップが、不満や強いクレームにつながるケースがあります。

 

コロナ禍以降、現場の緊張感も高まった

新型コロナウイルス流行以降、面会制限や受診制限にともなう待機時間増加など、患者側にも大きなストレスがかかる状況が続き、その結果、受付や看護師へ感情的な言動が向かいやすくなったとも言われています。

特に救急外来や発熱外来では、強いクレーム対応に追われた医療機関も少なくありませんでした。

 

「これもハラスメント」という認識が広がった

以前は、「少しくらい怒鳴られるのは普通」と受け止められていた行為も、現在では“職場環境を害する問題”として認識されるようになっています。

そのため、「件数そのものが急増した」というより、

  • 可視化された
  • 問題として共有されるようになった
  • 放置できなくなった

という変化のほうが実態に近いかもしれません。
特に現在の医療・介護業界では、人材不足が深刻化しています。
その中で、「対応できる人が耐え続ける」状態を放置すれば、メンタル不調や離職につながります。

だからこそ今は、“患者対応の問題”ではなく、“職員を守るための職場づくり”として、病院全体で患者ハラスメント 対策を進める必要性が高まっているのです。

 

 

2. 医療機関で実際に起きやすいカスハラ事例

病院でのカスタマーハラスメント(カスハラ)は、単なる「クレーム対応」の範囲を超えてしまうケースも少なくありません。
ここでは、医療現場で実際に起こりやすい事例を紹介します。

 

受付での暴言・威圧行為

外来の待ち時間や予約調整をきっかけに、受付職員へ強い口調で怒鳴るケースです。

例えば、「いつまで待たせるんだ」「責任者を出せ」「お前じゃ話にならない」など、大声で威圧するような言動が続く場合があります。
他の患者さんがいる前で怒鳴られることで、職員側が強いストレスを感じることも少なくありません。

 

看護師への人格否定・セクハラ発言

医療行為や説明に不満を持った患者さんから、看護師へ人格否定のような発言が向けられるケースもあります。

「使えない」「新人か?」「こんなのもできないのか」といった暴言のほか、容姿について繰り返し言及したり、不要な身体接触を行ったり、プライベートな情報を執拗に聞き出そうとしたりするケースもあります。
こうした行為はセクハラに該当する可能性があり、特に女性職員が多い職場では見過ごせない問題となっています。

 

長時間・執拗な電話クレーム

同じ内容の苦情電話を何度も繰り返したり、長時間電話を切らないケースもあります。

毎日のように電話をかけてきたり、すでに説明済みの内容について何度も回答を求めたり、さらには深夜や休日にも連絡を続けたりすることで、通常業務に支障が出るレベルになることもあります。
対応した職員だけでなく、部署全体の負担につながるケースも少なくありません。

 

土下座や過剰謝罪の要求

ミスや待ち時間などを理由に、「誠意を見せろ」「土下座しろ」「謝罪文を書け」など、過度な謝罪を求めるケースもあります。

本来、病院側に説明責任や謝罪が必要な場面であっても、人格を傷つけたり屈辱を与えたりすることを目的とした要求は正当な苦情対応の範囲を超えています。
このような行為は、職員へ精神的圧力をかけるカスハラに該当する可能性があります。

 

SNS投稿や口コミを利用した脅し

近年増えているのが、SNSや口コミサイトを利用した威圧行為です。

「SNSに書くからな」「口コミで拡散してやる」「病院名を晒す」といった発言によって、職員へプレッシャーをかけるケースがあります。
病院側が風評被害を恐れるあまり、現場職員だけに負担が集中してしまうケースもあります。

 

訪問診療・訪問介護での密室トラブル

訪問系サービスでは、職員が一人で対応する場面も多く、カスハラリスクが高くなりやすい傾向があります。

例えば、利用者や家族から長時間引き止められたり、威圧的な態度を取られたりするほか、個人的な連絡先を聞かれたり、不適切な接触を受けたりするケースもあります。
第三者がいない環境だからこそ問題が表面化しにくく、深刻化しやすい点が訪問サービス特有の課題といえるでしょう。

 

 

3. 「我慢するのが当たり前」の時代ではなくなっている

これまでの医療現場では、「患者さんにも事情があるから」「医療職なら耐えるべき」「クレーム対応も仕事の一部」と考えられ、職員が我慢しながら対応することも少なくありませんでした。

しかし現在は、そうした考え方そのものが見直されています。背景には、労働施策総合推進法によるハラスメント対策の強化があり、病院にも職員を守るための環境整備が求められるようになりました。

 

カスハラを放置すると、職員のメンタル不調や休職、離職につながるだけでなく、人材不足や医療サービスの質の低下を招く可能性があります。

だからこそ今、多くの病院ではカスハラを単なる患者対応の問題ではなく、「職員を守るための職場環境づくり」の課題として捉え、組織的な対策を進めるようになっているのです。

 

 

4. 病院で求められるカスハラ対策とは?

では、実際に病院ではどのような対策が必要なのでしょうか。

大切なのは、現場スタッフが個人で抱え込むのではなく、病院全体、病院管理職や看護管理者が対応する仕組みを整えることです。
患者さんとの接点が多い医療現場だからこそ、「どこまでが正当な要望で、どこからがハラスメントなのか」を組織として明確にしておく必要があります。

 

「職員を守る」という方針を明確にする

まず重要なのが、病院として職員を守る姿勢を明確に示すことです。

これまでの医療現場では「患者さん優先」の考え方が強く、職員が負担を抱えながら対応する場面も少なくありませんでした。しかし現在は、職員の安全や就業環境を守ることも病院の重要な責任とされています。

 

そのため近年では、暴言や暴力を許容しないことや、迷惑行為への対応方針、悪質なケースでは診療制限や警察への相談を行うことなどを、院内掲示やホームページで明示する医療機関も増えています。

病院として明確な基準を示すことで、職員は「相談してよい」と感じやすくなり、患者さん側にも抑止効果が期待できます。

 

管理者が現場を守る

カスハラ対応で避けたいのが、一部の職員へ負担が集中することです。

病院では、ベテラン看護師やクレーム対応に慣れた職員へ対応が偏りがちですが、それでは精神的な負担が蓄積してしまいます。

そのため、一定以上のクレームは管理職へ引き継ぐ、長時間対応を避ける、複数名で対応するなど、組織としてのルールを整備しておくことが重要です。

 

特に若手職員は「自分が何とかしなければ」と無理をしやすいため、困ったときに上司や管理者が対応を引き受ける体制を作ることが欠かせません。

「何かあれば管理者が守ってくれる」という安心感は、職員の心理的負担の軽減にもつながります。

 

記録を残す

カスハラ対応では、記録を残すことも重要です。

その場では単なるクレームに見えても、記録を積み重ねることで、継続的な迷惑行為や悪質なハラスメントであることがわかる場合があります。

対応日時や場所、発言内容、対応者などを記録しておくことで、院内で情報共有しやすくなり、担当者変更や対応制限、管理職介入などの判断もしやすくなります。

また近年は、通話録音や防犯カメラ映像の保存などを活用する医療機関も増えています。

録音には、発言内容を正確に残せるだけでなく、威圧的な言動の抑止効果も期待できます。実際に「通話を録音しています」と案内することで、過度なクレームが落ち着くケースもあります。

記録や録音は、職員を守るための客観的な証拠として、今後ますます重要になるでしょう。

 

被害後のフォローを行う

カスハラ対策では、対応方法だけでなく、被害を受けた職員へのフォローも欠かせません。

医療職は責任感が強く、「自分の対応が悪かったのではないか」と自分を責めてしまうことがあります。しかし、どれだけ丁寧に対応していても、理不尽な言動を受けることはあります。

そのため病院には、面談や相談窓口の設置、上司からのフォロー、必要に応じた配置配慮やメンタルヘルス支援などが求められます。

特に注意したいのは、「慣れているから大丈夫」と思い込まないことです。経験豊富な職員ほど我慢を重ね、ある日突然限界を迎えるケースもあります。

カスハラ対策は、問題が起きたときの対応だけではありません。職員が安心して働き続けられる環境を整えることこそ、病院に求められる重要な取り組みといえるでしょう。

 

 

病院向けカスハラ対策チェックリスト

以下の項目について、院内で対応できているか確認してみましょう。

 

基本方針・ルール整備

  • カスハラに対する基本方針を定めている
  • 職員保護に関する方針を院内へ周知している
  • ホームページや院内掲示で患者・家族へ周知している
  • 暴言・暴力・迷惑行為への対応基準を定めている
  • 悪質なケースに対する対応制限ルールを定めている

 

組織対応体制

  • カスハラ発生時の報告ルートが明確になっている
  • 一定以上のクレームは管理職へ引き継ぐルールがある
  • 職員が単独対応しない仕組みがある
  • 夜間・休日の対応フローが整備されている
  • 必要に応じて警察や弁護士へ相談できる体制がある

 

記録・証拠保全

  • クレーム・カスハラ対応記録の様式がある
  • 発生日時や発言内容を記録する運用がある
  • 院内で情報共有できる仕組みがある
  • 通話録音を実施している
  • 防犯カメラや録画データを適切に保存している

 

職員支援・フォロー

  • ハラスメント相談窓口を設置している
  • 被害職員への面談やフォローを実施している
  • 必要に応じて配置変更などの配慮ができる
  • メンタルヘルス支援体制がある
  • 「我慢する人が評価される」風土になっていない

 

教育・研修

  • カスハラの定義を職員へ周知している
  • 管理職向け研修を実施している
  • クレーム対応とカスハラの違いを教育している
  • 新入職員向けに対応方法を説明している
  • 定期的に事例共有を行っている

 

チェック結果の目安

20項目以上
職員保護の仕組みが比較的整備されています。定期的な見直しを行いながら運用を継続しましょう。

10~19項目
基本的な対策は進んでいますが、運用面や職員フォローに課題が残っている可能性があります。

9項目以下
現場職員へ負担が集中している恐れがあります。まずは方針の明文化と相談体制の整備から着手することをおすすめします。

 

 

まとめ|カスハラ対策は「職員を守る仕組みづくり」から

患者さんやご家族からの暴言や威圧的な言動は、以前から医療現場に存在していました。しかし現在は、「仕方がない」と現場任せにするのではなく、病院全体で対応すべき課題として捉えられるようになっています。

特に人材不足が続くなか、職員が安心して働ける環境づくりは病院経営において重要なテーマです。カスハラを放置すれば、離職や人材定着の課題につながる可能性もあります。

だからこそ、病院管理職や看護管理者には、方針の明確化や対応体制の整備、情報共有や職員フォローなど、組織として職員を守る取り組みが求められています。

 

まずは本記事のチェックリストを活用し、自院の現状を確認してみてはいかがでしょうか。すべてを一度に整備する必要はありませんが、「職員を守る」という姿勢を明確に示すことが、安心して働ける職場づくりの第一歩になります。

 

 

 

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