理学療法士とは?仕事内容・資格・活躍の場

理学療法士の仕事
掲載日: 2025.07.14
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1. 理学療法とは?  

①理学療法とは?

理学療法は、病気やけが、高齢化、障害などで運動機能が低下した方々に対して、運動や物理的手段(温熱、電気刺激、超音波など)を用いて、運動機能を維持・改善するための治療法です。日本では「理学療法士及び作業療法士法」において、「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。

理学療法の目的は、直接的には運動機能の回復ですが、日常生活動作(ADL)の改善を通じてQOL(生活の質)の向上を目指します。寝返り、立ち上がり、歩行などの基本動作が不自由になると、日常生活に支障をきたします。そのため、理学療法では、障害や病気があっても「自分らしく生活したい」という一人ひとりの思いに寄り添った支援を行います。

②どんな人が理学療法の対象になるの?

理学療法は、運動機能が低下した方を対象としています。その原因は病気やけがだけでなく、体力が低下した高齢者、術後のリハビリが必要な方など多岐にわたります。健康な方に対しても、運動機能低下の予防やスポーツ分野でのパフォーマンス向上を目的に実施される場合もあります。

  • 中枢神経疾患:脳卒中、脊髄損傷、脳の外傷など
  • 整形外科疾患:骨折、腰痛、変形性関節症など
  • 呼吸器疾患:慢性閉塞性肺疾患、肺炎など
  • 心疾患:心筋梗塞、狭心症など
  • 体力低下:術後や高齢による体力低下など

理学療法は医師の指示に基づいて実施される医療行為であり、病院、診療所、老人保健施設などで受けることができます。また、在宅生活者に向けた訪問リハビリテーションや住宅改修の相談なども含まれます。利用を希望する場合は、主治医やケアマネージャー、市町村の福祉課へ相談することが一般的です。

2. 理学療法士とはどんな仕事?  

①理学療法士とは?

理学療法士(Physical Therapist: PT)は、病気やけが、障害などによって身体機能が低下した方に対し、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、さらには障害の悪化を防ぐことを目的に活動する専門職です。運動療法や物理療法(温熱、電気刺激、超音波など)を活用し、一人ひとりの身体状況や生活環境を評価した上で、目標に応じた治療プログラムを計画し、実践します。また、障害の進行を防ぐことで、自立した生活を目指す役割も担います。

②理学療法士の仕事内容と役割

1. リハビリ計画の作成・評価

患者さまの身体状況を評価し、「歩いて家に帰れるようになる」「車いすで移動できるようにする」といった具体的な目標を設定します。その目標に向けて計画を立て、必要に応じて見直しや修正を行います。

2. 運動療法

患者さまの身体機能を改善するために、以下の方法が用いられます

  • 歩行練習:平行棒を使った基本的な歩行練習から、階段昇降などの応用的な訓練
  • 筋力トレーニング:個々の体力や健康状態に合わせて筋力を強化
  • バランス訓練:転倒予防のため、体幹や下肢のバランスを鍛える運動

3. 物理療法

温熱、電気刺激、超音波、牽引療法など物理的手段を用いて身体の痛みを軽減し、血行を促進する治療法を行います。これにより、リハビリの効果を高め、生活の質(QOL)の向上を目指します。

4. 環境支援

患者さまが安全かつ快適に生活できる環境を整えるため、以下のような支援を行います

  • 車いすや歩行器などの補助器具の選定と使い方の指導。
  • 家屋内の段差を解消する手すりの設置や改修の提案。

5. チーム医療の一員として

理学療法士は、医師や看護師、作業療法士、福祉職などの他職種と協力し、包括的なケアを行います。リハビリの進捗状況や必要な支援内容を共有することで、患者さまの退院後の生活設計や適切な介護サービスの利用がスムーズに進むよう支援します。

理学療法士は、超高齢化社会や生活習慣病の増加を背景に、その役割が拡大しています。医療や福祉だけでなく、スポーツや産業分野など、より多様な場面での活動が期待されています。理学療法士は、「動作」と「生活」を支える専門職として、今後ますます重要な存在となるでしょう。

3. 理学療法士の資格取得方法  

理学療法士になるには、養成校で必要な教育課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。

①養成校での学び

理学療法士を目指すには、まず養成校に入学します。養成校には以下の種類があります。

4年制大学

4年制大学では、理学療法の基礎から応用まで幅広く学ぶことができます。附属病院や施設での臨床実習を通じて実践的なスキルを磨くことが可能です。さらに、卒業後は大学院や研究機関でのキャリアを目指す道も開かれています。研究や専門性を深めたい方に向いています。

短期大学(3年制)

短期大学は3年間で課程を修了でき、早期に資格取得を目指す方に適しています。限られた期間で効率よく学べるようカリキュラムが編成されています。ただし、理学療法士国家試験の受験資格を得られる短期大学は全国でも数が少ない点に注意が必要です。

専門学校(3年制・4年制)

専門学校は、即戦力となるスキルを身につける実践的な教育が特徴です。夜間部を設置している学校もあり、社会人が働きながら学ぶことも可能です。3年制では「専門士」、4年制では「高度専門士」の称号が授与されます。高度専門士は学歴的に大卒と同等とみなされ、大学院進学も可能です。

特別支援学校(視覚障がい者対象)

視覚障がいを持つ方は、高校卒業後に特別支援学校で3年間学ぶことで国家試験の受験資格を得られます。少人数クラスで個別サポートが受けられる環境が整っており、視覚障がいに配慮したカリキュラムが特徴です。

すでに作業療法士の資格を取得している方は、養成校で2年以上学ぶことで理学療法士国家試験の受験資格を得ることができます。

②国家試験の受験資格と試験内容

養成校で必要な課程を修了すると、理学療法士国家試験の受験資格が得られます。試験は毎年1回、2月下旬に実施されます。

試験内容

1. 筆記試験

  • 一般問題
    解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法
    出題形式:マークシート方式で、1問につき1点の選択問題。
  • 実地問題
    運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)及び理学療法
    出題形式:マークシート方式で、症例や事例を問う問題が出題され、1問につき3点。

2. 口述試験および実技試験

  • 重度視力障害者に対しては、筆記試験の実地問題に代わり、口述試験および実技試験が実施されます。
  • 試験科目は、運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)、理学療法

合格基準

合格基準は、総得点の約60%以上が目安です。直近の合格率は80~90%台で推移しており、合格率が比較的高い試験と言えます。合格発表は例年3月下旬に行われます。

理学療法士になるためには、最短で3年間の学びが必要です。短期大学や3年制の専門学校では、効率よく学び、早く資格を取得して現場で経験を積むことができます。一方で、4年制の大学や専門学校では、基礎から応用まで幅広い知識を学び、研究や専門性の深い分野に挑戦する機会が広がります。自分の目標や学びたい内容に合わせて選ぶことが大切です。

4. 理学療法士の活躍の場  

①就職先

理学療法士が活躍できる職場は、医療機関を中心に多岐にわたります。それぞれの職場で求められる役割や仕事内容について詳しく見ていきましょう。

医療施設

病院や診療所で勤務する理学療法士が最も多く、約65%が医療施設で働いています。医療施設での業務は、患者さまの症状や治療段階に応じたリハビリテーションが中心です。たとえば、急性期の病院では筋力低下の予防や早期回復を目指し、回復期では身体機能を取り戻すためのリハビリ、生活期では日常生活の質を維持するための支援を行います。

福祉施設

介護老人保健施設やデイサービス、訪問看護ステーションなどでは、高齢者や障がいを持つ方々に向けたリハビリを実施します。特に高齢化社会の進展に伴い、在宅医療のニーズが高まっており、訪問リハビリを実施できる理学療法士の需要が増えています。また、障がい者福祉施設では、一人ひとりの可能性を引き出し、新たな機能の獲得を目指したリハビリを行います。

スポーツ分野

スポーツジムやプロスポーツチームでは、ケガの予防やパフォーマンス向上のための指導を行うスポーツ理学療法士として活躍できます。選手やアスリートに対して、科学的根拠に基づいたトレーニングプランを提供し、競技への早期復帰やパフォーマンスの向上を目指します。

行政や教育分野

市役所や保健所、地域包括支援センターなどの行政機関では、健康増進や予防活動を担当します。地域住民に向けた体操教室の開催や運動機能の相談など、多様な業務に従事します。また、大学や専門学校の教員として理学療法士を育成する役割を担うことも可能です。

②給与について

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均年収は約432万円、月収は30.09万円、ボーナスは71.44万円です。初任給は約24.86万円で、初年度の年収は300万円程度とされています。理学療法士の仕事は夜勤がなく、資格を活かして長く働き続けることが可能です。

さらに、高齢化社会の進展に伴い、理学療法士の需要は医療機関だけでなく、介護や福祉分野を中心に増加しています。在宅リハビリの需要が高まっていることから、今後も理学療法士を積極的に採用する職場が増えていくと予想されます。

経験を積むにつれて年収は増加し、50代後半で年収のピークを迎え、600万円前後になるとされています。また、勤務先の規模や地域によっても給与に差があり、大規模な医療機関や都市部では給与が高めに設定される傾向があります。

理学療法士として働ける場所は多岐にわたります。理学療法士としての就職や転職をお考えの方は、ジョブソエルの求人情報をご覧ください。

 

参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html

5. 理学療法士としての転職やキャリアアップのポイント  

理学療法士として働き続ける中で、専門性を高めたり新たな分野へ挑戦したりすることで、キャリアアップの可能性が広がります。

専門資格を取得してスキルアップ

理学療法士としての専門性を高めるためには、認定理学療法士や専門理学療法士といった資格の取得が有効です。これらの資格は特定の分野における高度なスキルを証明するものであり、資格手当が加算されたり、専門職として活躍の場が広がったりするメリットがあります。

管理職への昇進

病院や施設での経験を積むことで、主任や課長、施設長といった管理職への昇進が可能です。管理職では、リハビリ業務だけでなく、施設運営や新人教育など幅広いスキルが求められます。役職手当が加算されることで収入も向上します。

異業種への転職

理学療法士の知識やスキルは、医療機器メーカーや福祉用具メーカー、スポーツジムといった異業種でも活かすことができます。たとえば、医療機器の開発や営業職では、理学療法士としての経験が商品の改良や効果的な提案に役立つでしょう。

独立や起業

理学療法士の資格を活かして整体院やリハビリ関連事業を立ち上げる道もあります。特にオンラインでのリハビリ指導や、リハビリ関連のアプリ開発といった新しい事業形態は注目されています。独立にはリスクも伴いますが、自分のペースで働ける自由さや収入アップの可能性が魅力です。

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6. 理学療法士と作業療法士の違い  

理学療法士と似た役割を持つ職種として作業療法士があります。どちらもリハビリテーションに携わる専門職ですが、その役割や対象とする支援内容には違いがあります。

①対象とする動作の違い

理学療法士は「立つ」「座る」「歩く」といった基本的な身体動作の回復や維持を目的に、運動療法や物理療法を用いてリハビリを行います。たとえば、平行棒を使った歩行練習や、筋力トレーニングによる身体機能の向上がその代表例です。

一方で、作業療法士は「食事をする」「料理をする」「字を書く」など、日常生活に必要な応用的動作を支援します。患者一人ひとりの生活環境や目標に応じて、日々の生活に直結したリハビリを行う点が特徴です。

②リハビリの目的の違い

理学療法士のリハビリは、運動機能の改善や痛みの軽減を通じて、患者が自立した日常生活を送れるように支援することが主な目的です。障害や病気で低下した身体機能を改善し、基本動作の習得や維持を目指します。

一方、作業療法士のリハビリは、患者がその人らしい生活を送ることを目指します。特に、社会生活への適応や精神的なサポートを含む、生活全般の質を高めることに重点を置いています。

③活躍する場面の違い

理学療法士は、病院やリハビリ施設をはじめ、スポーツ現場や心臓リハビリテーションなど、身体機能の回復を中心とする領域で活躍しています。特に、スポーツ選手のケアやパフォーマンス向上に携わるケースも増えています。

作業療法士は、精神科病院や福祉施設、放課後デイサービスなど、日常生活や社会生活を支える環境で活動することが多いです。特に、発達障害や精神疾患のある患者の生活サポートに強みを発揮します。

 

参考:公益社団法人 日本理学療法士協会
https://www.japanpt.or.jp/

7.転職活動とJobSoel(ジョブソエル)の活用  

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8.まとめ  

理学療法士(PT)は、ケガや病気、高齢などで体の動きが不自由になった人に対して、運動や物理的手段を使って回復をサポートするリハビリのプロです。歩く・立つ・座るなどの基本動作を取り戻し、日常生活を自分らしく送れるよう支援します。医療・介護・スポーツ・福祉と活躍の場も広く、国家資格としての信頼性も◎。
この記事が、理学療法士という仕事を知るきっかけになればうれしいです。

 

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