介護施設や病院で患者様・利用者様の写真をSNSに載せてもいい?知っておくべき法律・防止策・同意の取り方

労務・給与 看護師 介護職
掲載日: 2026.10.16
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介護施設や病院で患者様・利用者様の写真をSNSに載せてもいい?知っておくべき法律・防止策・同意の取り方
 

近年、医療機関や介護施設における「職員個人による患者様・利用者様の動画・写真の不適切投稿」が大きな社会問題となっています。
一方で、集客や採用強化、ご家族への情報発信のために「施設公式SNS(Instagram、TikTok、YouTube等)」を開設・運用する事業所も急増しています。

個人の軽率な投稿を防ぐ対策はもちろん、公式アカウントの運用においても「プライバシー権の保護」と「適切なリスク管理」が不可欠です。

管理者が押さえておきたいポイント

  • 私用スマートフォンの持ち込み可能な場所・用途を明確にし、業務中の緊急連絡手段も用意する
  • 撮影・投稿には施設管理の端末を使い、アクセス制限や画像データの削除手順を定める
  • 個人SNSへの業務情報の投稿禁止など、具体例を含むSNSガイドラインを周知する
  • 公式SNSの投稿前に、複数人で同意の有無、個人情報、背景の映り込み、位置情報を確認する
  • 同意書には掲載目的・媒体・同意撤回の方法を記載し、本人の意思や判断能力に応じて同意を得る
  • 研修を定期的に行い、投稿トラブル発生時の報告・非公開化・問い合わせ対応の手順を決めておく

本記事では、医療・介護現場で押さえるべき関係法令、個人の不適切投稿を防ぐ対策、公式SNSの安全な運用ルール、患者様・利用者様(ご家族)からの事前同意の取り方を分かりやすく解説します。

 

目次

 

1. 医療・介護のSNS投稿で抵触する主な法律・規則

① 個人情報保護法(要配慮個人情報の漏洩)

患者様・利用者様の病状、介護・看護を受けている姿、顔写真などは「要配慮個人情報」です。
本人の同意なくSNS等へ公開・漏洩させる行為は、法律違反となる可能性があります。

② 民法(プライバシー権・肖像権侵害/損害賠償責任)

無断撮影・公開により精神的苦痛を与えた場合、患者様やご家族から損害賠償(慰謝料)を請求されるリスクがあります(民法第709条)。
職員個人の不祥事であっても、施設・事業者側が管理・監督責任を問われ、賠償責任を負うことがあります(民法第715条)。

③ 刑法(名誉毀損罪・侮辱罪)

不適切なコメントや嘲笑的な動画・文章を添えて投稿した場合、名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)などの刑事罰の対象となる可能性があります。

④ 国家資格における守秘義務違反

医師法、保健師助産師看護師法、社会福祉士及び介護福祉士法等により、業務上知り得た秘密を守る義務が課されています。
違反した場合、資格の停止や取消処分を受ける可能性があります。

⑤ 就業規則・懲戒処分

多くの施設では秘密保持規定やSNS利用規程が定められています。
違反が発覚した場合、事実関係の調査を経て、懲戒解雇を含む処分が下されることがあります。

 

2. 職員個人の「不適切投稿」を未然に防ぐ予防策

不適切投稿を防ぐには、「注意喚起」や個人のモラルだけに頼るのではなく、環境(ハード)とルール(ソフト)の双方から対策することが重要です。
現場の実情に合わないルールは形骸化し、隠れ投稿などのリスクにつながることがあります。

① 私用スマートフォンの現場持ち込み制限

  • 避けたい対策:持ち物検査やロッカー保管を伴う一律の持ち込み禁止。緊急連絡を受け取れない不満から不審感を生み、休憩時間や隠れて持ち込む行為を誘発するおそれがあります。
  • 改善策:持ち込み可能なエリアと用途を明確にします。執務エリア・病室・介護フロアへの持ち込みは禁止し、休憩室やロッカーでの私用を認めます。業務中の緊急連絡は施設の固定電話を窓口とするルートを整えます。

② 撮影・業務専用端末の限定管理

  • 避けたい対策:業務端末を導入しただけで、管理やセキュリティ設定を行わないこと。個人のクラウドアカウントへの同期や、端末内に写真データが残ることによる漏洩リスクが高まります。
  • 改善策:アクセス制限とデータ消去の流れを整えます。MDMなどの端末管理ツールを活用して外部SNSへのアクセスやアプリのダウンロードを制限し、画像・動画は保護されたサーバーへ移行した後、端末から削除する仕組みを整えます。

③ SNSガイドラインの具体化

  • 避けたい対策:「患者様・利用者様のプライバシーを守ること」など、抽象的な注意喚起だけにすること。個人の解釈でグレーゾーンが生まれるおそれがあります。
  • 改善策:NG行為を具体化したルールブックやチェックリストを用意します。たとえば、次の行為を明記します。
    • 非公開アカウントであっても、業務内容を投稿しない
    • 患者様・利用者様が特定できない場合でも、症例や部屋番号、声の入った動画を投稿しない
    • 制服を着た状態や名札が見える状態で、個人のTikTokやInstagram用の撮影をしない

④ 定期的なコンプライアンス研修の実施

  • 避けたい対策:入職時に誓約書を書かせるだけ、またはマニュアルを読み上げるだけの研修。内容が受け身になり、当事者意識が薄れるおそれがあります。
  • 改善策:他院・他施設の事例を使ったワークショップ型研修を実施します。実際の不適切投稿事例を取り上げ、「どこに問題があったか」「施設や投稿者本人にどのような影響があったか」を話し合います。

3. 施設公式SNSを安全に運用するための3つのルール

① 投稿前のダブルチェック体制の標準化

現場スタッフが作成した投稿画像・動画・テキストは、施設長・管理者・広報責任者など複数人による確認を経てから公開します。

② 映り込みと個人情報の徹底チェック

投稿前に、次の点を確認します。

  • 背景に他の利用者、面会者、氏名が分かるネームプレート、伝言板、カレンダーなどが映り込んでいないか
  • 服装の乱れや、利用者の尊厳を傷つける表情・姿勢になっていないか
  • 写真や動画の位置情報(GPSメタデータ)が削除されているか

③ 万が一のトラブル・炎上時の初期対応ルールの策定

ご家族や閲覧者から指摘やクレームを受けた場合は、独断で削除・隠蔽せず、まず証拠を残したうえで上司へ報告します。その後、迅速に非公開化し、誠実に対応できる窓口を一本化しておきます。

 

4. 患者様・利用者様・ご家族から「撮影・掲載同意」を得る手順

広報紙、ホームページ、公式SNS等に写真や動画を掲載する場合は、事前に書面による同意を得ましょう。
口頭での確認だけでは、「SNSに載るとは思わなかった」などのトラブルにつながることがあります。

同意書(確認書)取得のステップと注意点

  1. 契約時・入所時の書類に組み込む:入所契約書などと一緒に「広報・SNS等への写真・動画掲載に関する同意書」を用意すると、手続きを進めやすくなります。
  2. 認知機能に応じて対応する:
    • 本人の判断力がある場合:ご本人へ丁寧に説明し、自筆署名をいただきます。
    • 認知症等で意思確認が難しい場合:キーパーソン(ご家族や法定代理人)に利用目的を説明し、代理署名をいただきます。
  3. 部分同意の選択肢を設ける:「全面許可」か「全面拒否」の二択にせず、本人の希望に合わせて選べるようにします。

同意書に盛り込む選択肢の例:

  • 公式ホームページ・ブログへの掲載(顔出し可)
  • 公式SNS(Instagram・TikTok等)への掲載(顔出し可)
  • 顔を隠した状態(後ろ姿・スタンプ加工等)での掲載
  • 施設内掲示板・広報誌(紙媒体)のみ掲載
  • 写真・動画の掲載は一切不可

同意書への必須記載事項

  • 使用目的(例:施設の活動報告、採用広報、イベント紹介)
  • 掲載媒体(例:公式Instagram、公式YouTube、施設ホームページ)
  • 同意撤回権と連絡先(同意後も申し出があれば掲載を取りやめる旨)
  • 目的外利用の禁止(広報用に得た同意を、職員個人のSNS等へ転用しないこと)

5. 医療・介護現場でのSNS利用・撮影に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 患者様(利用者様)本人の許可があれば、個人のSNSに写真を載せてもいいですか?

A.いいえ。個人アカウントへの投稿は原則として避けてください。
本人が口頭で承諾した場合でも、後から「そのつもりではなかった」とトラブルになることがあります。
また、職員には業務上知り得た秘密を守る義務があります。施設公式の広報目的で、事前に書面で同意を得ている場合を除き、個人SNSへの投稿は行わないでください。

Q2. 顔や名前が映っていなければ、病室や介護フロアの様子を投稿しても大丈夫ですか?

A.いいえ。顔や名前が隠れていても、服装・持ち物・病室の構造・声・投稿日時などから個人が特定されることがあります。
個人が特定できない場合でも、施設の許可なく現場の状況を撮影・公開する行為は、コンプライアンスや就業規則に違反するおそれがあります。

Q3. 「鍵アカウント(非公開設定)」なら、職場の出来事や写真を投稿しても問題ないですか?

A.いいえ。非公開設定でも、フォロワーによるスクリーンショットや外部への転載・流出のリスクがあります。
「身内しか見ないから大丈夫」と考えず、業務に関する写真や情報は投稿しないでください。

Q4. 施設公式SNSに掲載するための同意書は、家族の同意だけでも有効ですか?

A.本人の判断能力に応じて対応が異なります。
本人に十分な判断能力がある場合は、本人の署名(同意)を得ます。
本人の意思確認が難しい場合は、キーパーソン(ご家族や法定代理人)へ丁寧に説明し、代理署名を受けます。

Q5. 以前に写真掲載の同意をもらっていれば、過去の写真をずっと使い続けてもいいですか?

A.同意時に定めた目的・範囲内で利用します。
同意撤回の申し出があった場合は、速やかに掲載を取りやめます。
同意書には、同意をいつでも撤回できる旨を明記しておくとよいでしょう。

Q6. スタッフの私用スマホで業務用の写真(処置経過や広報用など)を撮影するのはダメですか?

A.原則として避けましょう。
私用スマホで撮影すると、個人のクラウドサービス(iCloudやGoogleフォトなど)へ自動でバックアップ・同期されたり、個人アカウントから誤ってSNSへ共有されたりするリスクがあります。
撮影が必要な場合は、施設が管理し、アクセス制限やセキュリティ設定をした業務専用端末を使用します。

まとめ

医療・介護現場におけるSNSトラブルは、患者様・利用者様の尊厳やプライバシーを傷つけるだけでなく、施設全体の社会的信用を失墜させ、経営にも深刻な影響を及ぼします。

  • 私用端末の持ち込み範囲を定め、業務端末を適切に管理する
  • 明確なSNSガイドラインとダブルチェック体制を構築する
  • 書面による確実な事前同意を取得する

職員個人のモラルに頼るのではなく、施設・組織全体で管理体制を整え、安心・安全な広報活動と現場環境の維持に努めましょう。

 

 

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