看護師の行政処分とは?処分の種類・転職への影響と履歴書での伝え方を解説

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掲載日: 2026.10.27
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看護師の行政処分とは?処分の種類・転職への影響と履歴書での伝え方を解説
 

看護師が法令違反や業務上の不正行為などを行った場合、刑事罰や勤務先による懲戒処分とは別に、看護師免許に関わる「行政処分」を受けることがあります。

最近では、厚生労働省が公表した「2026年9月28日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」において、保健師・助産師・看護師29名について審議が行われ、22名に対する行政処分と、7名に対する行政指導(厳重注意)とする答申が示されました。
行政処分の内訳は、免許取消3件、業務停止16件、戒告3件です。

行政処分には「免許取消」「業務停止」「戒告」の3種類があり、処分によって看護業務を続けられるかどうかが異なります。
ただし、医療事故を起こしたり、刑事罰を受けたりした場合に、必ず同じ処分が下されるわけではありません。

この記事では、行政処分の対象や決定の流れ、処分後の再教育研修に加え、転職活動での履歴書の考え方や、採用担当者への伝え方を解説します。

この記事でわかること

  • 看護師の行政処分の種類と、それぞれの違い
  • 行政処分の対象となる事由と、処分が決まるまでの流れ
  • 処分歴に関する公表情報と、確認できる範囲
  • 転職時に確認したい免許の状態と、履歴書・面接での伝え方
  • 再教育研修や再免許の仕組み

※本記事は2026年10月時点で確認できる法令・公表資料をもとにしています。

 

目次

 

1. 看護師の「行政処分」とは?

看護師の行政処分とは、保健師助産師看護師法に基づき、厚生労働大臣が行う免許取消・業務停止・戒告のことです。

同法第14条では「法律で定める事由に該当する場合や、看護師としての品位を損するような行為があった場合に、これらの処分を行うことができる」と定めています。

行政処分は、医療を受ける人の安全や、看護職に対する信頼に関わる制度です。刑事罰や勤務先の懲戒処分とは、判断する機関や目的が異なります。

勤務先から懲戒処分を受けたことだけで、看護師免許が自動的に取り消されるわけではありません。それぞれの制度に基づいて判断されます。

なお、2025年6月1日に懲役・禁錮が廃止され、拘禁刑が創設されました。
※過去の判決や処分事例では、懲役・禁錮という名称が使われている場合があります。

看護師の「行政処分」とは

 

2. 行政処分は誰が決める?決定までの流れ

看護師に対する行政処分を行うのは、厚生労働大臣です。准看護師の行政処分は都道府県知事が行うため、区別して理解しましょう。

看護師については、厚生労働大臣が処分を行う前に、医道審議会の意見を聴く必要があります。また、免許取消や業務停止の手続きでは、本人が意見や弁明を述べる機会も設けられています。

医道審議会・看護倫理部会の役割

厚生労働省の医道審議会には、保健師助産師看護師分科会が設置されています。その看護倫理部会で、看護師等に対する行政処分に関する審議が行われます。
審議では、刑事処分の内容だけでなく、事案の重大性、看護師に求められる倫理、国民への影響などを踏まえて、個別に判断されます。
処分には至らず、行政指導として「厳重注意」とする答申が出される場合もあります。厳重注意は、法律上の行政処分である「戒告」とは異なります。

行政処分は誰が決める

3. 看護師が行政処分の対象となるのはどのような場合?

保健師助産師看護師法第9条・第14条では、刑事罰や業務上の不正行為のほか、心身の状態などに関する事由も定められています。

 

① 罰金以上の刑に処せられた場合

罰金以上の刑に処せられた場合は、業務に関係する犯罪だけでなく、私生活上の犯罪であっても行政処分の対象となり得ます。
例えば、患者への加害行為、窃盗・詐欺・暴行・傷害、飲酒運転などの道路交通法違反、薬物犯罪などが問題になります。実際に厚生労働省が公表した答申の概要でも、道路交通法違反や暴行、傷害などが挙げられています。
ただし、「罰金なら業務停止」「拘禁刑なら免許取消」というように、刑の種類だけで行政処分が決まるわけではありません。事案の内容を踏まえて個別に判断されます。

 

② 業務に関して犯罪や不正の行為があった場合

看護師の業務に関する犯罪や不正行為も、処分の対象となり得ます。
厚生労働省は、業務に関する不正行為などについて、看護師としての品位や職業倫理に反する場合には、刑事処分の有無にかかわらず行政処分を行うという考え方を示しています。
そのため、「刑事事件になっていない」「罰金を受けていない」という理由だけで、行政処分の可能性がないとはいえません。

 

③ 看護師としての品位を損するような行為があった場合

看護師としての品位を損するような行為も、法律上の処分事由です。
例えば、患者の尊厳を傷つける行為や、業務上知り得た情報の不適切な取り扱いなどは、看護倫理や関係法令の観点から問題となります。ただし、個々の行為が行政処分に該当するか、どのような処分になるかは、具体的な事情によって判断されます。
患者や利用者の写真・個人情報をSNSに投稿する場合も、勤務先のルールや守秘義務、本人の同意などを確認する必要があります。

 

④ 心身の障害により、業務を適正に行えない場合

法律上は、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として、厚生労働省令で定める場合も処分事由に含まれます。
施行規則では、視覚・聴覚・音声機能・言語機能・精神の機能の障害により、業務に必要な認知・判断・意思疎通を適切に行えない場合を定めています。病名や障害があることだけで、一律に処分されるという意味ではありません。

 

⑤ 麻薬・大麻・あへんの中毒に該当する場合

保健師助産師看護師法では、「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」であることも事由として定めています。
これは、薬物犯罪で罰金以上の刑を受けた場合とは別の規定です。

看護師が行政処分の対象となるのはどのような場合?

 

4. 行政処分の3つの種類と、それぞれの影響

行政処分には、免許取消・業務停止・戒告があります。転職や復帰を考える場合は、それぞれの法的な効果を区別することが重要です。

これらは保健師助産師看護師法第14条に規定されています。

 

免許取消

免許取消を受けると、その免許に基づいて看護師として働くことはできなくなります。
再び看護師として働くためには、再免許を受ける必要があります。犯罪や品位を損する行為などを理由とした取消では、処分の日から5年が経過していることに加え、再び免許を与えるのが適当と認められる必要があります。
5年経過すれば自動的に免許が戻るわけではありません。また、免許証を紛失した場合などの「再交付」と、取消後の「再免許」は異なる手続きです。

 

業務停止

業務停止を受けると、指定された期間は看護師業務に従事できません。
免許取消とは異なるため、「免許がなくなる」「無資格になる」という説明は適切ではありません。ただし、停止期間中に看護師業務を行うことは禁止されます。
停止期間の終了後に復帰を予定する場合は、処分通知の内容や再教育研修の受講状況、勤務先での復帰手続きを確認しましょう。

 

戒告

戒告は、将来を戒める行政処分です。戒告そのものによって看護業務が禁止されるわけではありませんが、単なる口頭注意とは異なります。
戒告を受けた看護師も再教育研修の対象となるため、必要な対応を確認することが大切です。

行政処分の3つの種類

 

5. 行政処分を受けた場合、転職や履歴書はどうなる?

過去に行政処分を受けた看護師が再出発(転職)を目指す際、最も気になるのが「転職活動での伝え方」や「履歴書の書き方」です。
転職時において最も大切なのは、「過去の処分事実」だけでなく「現在、看護師として安全に働ける状態かどうか」を正しく・正確に伝えることです。

 

5-1.応募前に必ず確認すべき「現在の免許と就業制限」

まずは、ご自身の現在の状況を正確に整理・把握しておきましょう。

  • 免許取消を受けていないか
  • 業務停止期間が完全に終了しているか
  • 命じられた再教育研修の受講・完了手続きがどこまで進んでいるか
  • 入職予定日の時点で、問題なく看護業務に従事できる状態か

免許取消中や業務停止期間中であるにもかかわらず、「問題なく働ける」と虚偽の説明をすることは絶対に避けなければなりません。

 

5-2.履歴書に行政処分歴を書く必要はある?

「行政処分歴は必ず履歴書の賞罰欄に書かなければならないのか」という点については、応募先が指定する記載要領や質問項目を確認する必要があります。

  • 制度の違いを把握する:行政処分・刑事罰・勤務先の懲戒処分はそれぞれ異なる制度です。「行政処分を受けた」という事実だけで、すべてを一律に賞罰欄へ記載しなければならないとは限りません。
  • 質問された場合は事実を正確に伝える:応募書類や面接の場で、免許の状態・過去の処分歴・現在の就業制限について尋ねられた場合は、事実を隠さず正確に回答しましょう。職歴や勤務期間をごまかすことも経歴詐称に繋がるため厳禁です。

※どこまで記載・説明すべきか判断に迷う場合は、提出書類の案内をよく確認し、必要に応じて労働相談窓口や弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

 

5-3.採用担当者へ伝える際のポイントと説明例文

面接などで説明を求められた際は、単に処分を受けた事実だけでなく、「現在の状況」と「再発防止に向けた取り組み」をセットで整理して伝えると誠実さが伝わりやすくなります。

【面接で伝えるべき主な項目】

  • 処分の種類と発生時期
  • 業務停止期間の終了日(業務停止の場合)
  • 再教育研修の受講・修了状況
  • 再発防止のために具体的に取り組んでいること

【説明例】

「〇年〇月に業務停止〇か月の行政処分を受けました。停止期間は〇年〇月に終了し、命じられた再教育研修もすべて修了しております。現在は、〇〇の確認プロセスを徹底するなど、再発防止に向けた取り組みを行っております。」

※状況に応じて、研修修了の旨や具体的な改善策をご自身の事実に合わせて調整してください。

 

5-4.氏名で処分歴を確認することはできる?

厚生労働省は、医道審議会(看護倫理部会)の議事要旨などで行政処分の概要(答申結果)を公表しています。

  • 実名公表の範囲:公表されている議事要旨には、処分の種類・件数・原因となった違法行為などが掲載されていますが、対象者の氏名や免許番号までは記載されていません(※2026年9月時点の公表資料に基づく)。
  • 資格検索システムについて:厚生労働省の「医師等資格確認検索」は医師・歯科医師を対象としたシステムであり、看護師の処分歴を個人名で検索できる機能ではありません。

したがって、「官報や厚生労働省のウェブサイトで実名が必ず検索・参照されるため100%発覚する」と言い切ることはできませんが、だからといって虚偽の申告をしてよい理由にはなりません。

 

5-5.前職への調査(リファレンスチェック)で発覚する?

選考の過程で、応募先が本人の同意を得た上で前職での在籍状況や業務経過を確認(リファレンスチェック)するケースがあります。
ただし、個人情報保護の観点から、前職の事業所が本人の同意なく個人データを第三者へ提供することは原則できません。「前職調査によって必ず処分歴が伝わる」と一概に決定づけることはできませんが、誠実な情報開示に努めることが信頼回復への第一歩となります。

行政処分を受けた場合、転職や履歴書

 

6. 処分後の雇用と、再教育研修の仕組み

行政処分を受けた場合、その後の勤務先での雇用関係や、復帰に向けた手続きがどのようになるのかを正しく理解しておくことが重要です。

 

6-1.行政処分を受けると、必ず解雇される?

行政処分と、勤務先(病院・施設)による解雇処分はそれぞれ別の制度に基づいています。

免許取消や業務停止処分によって一定期間看護業務に従事できなくなると、雇用継続や収入に大きな影響を及ぼす可能性があります。しかし、「行政処分を受けた」という事実のみで自動的に即解雇となるわけではありません。

雇用の継続、配置転換(事務職等への変更)、休職手続きなどの対応は、以下の要素を踏まえて総合的に判断されます。

  • 処分の種類と期間(業務停止の月数など)
  • 労働契約の内容および就業規則の規定
  • 事故や不祥事における個別の事情・反省の程度

※勤務先が労働者を解雇するにあたっては、法的な客観的合理性や社会通念上の相当性が求められます。

 

6-2.再教育研修の対象となる人は?

行政処分を受けた看護師等に対しては、保健師助産師看護師法および厚生労働大臣の命令に基づき、「保健師等再教育研修」が実施されます。

厚生労働省の通知により、2008年4月1日以降に以下の対象となったすべての看護師等へ研修の受講が義務付けられています。

  • 「戒告」処分を受けた人
  • 「業務停止」処分を受けた人
  • 免許取消後に「再免許」を受けようとする人

 

6-3.再教育研修の内容は?

再教育研修では、医療従事者としての職業倫理や、医療安全をはじめとする看護技術などを改めて学び直します。処分の重さや内容に応じて、原則として以下の形態で研修が行われます。

指定された研修課程をすべて修了した後は、その旨を「看護師籍」等へ登録する手続きが必要となります。復帰までの手順や具体的な日程については、厚生労働省等から交付される通知内容に沿って滞りなく進めましょう。

再教育研修の内容

 

7. よくある質問(Q&A)

Q1. プライベートでの違反やトラブルでも、行政処分の対象になりますか?

A. はい。業務外の行為であっても、内容によっては対象になります。
罰金以上の刑に処せられた場合などは、私生活上の犯罪でも処分対象となり得ます。ただし、刑事罰を受けたことで自動的に一定の行政処分が決まるわけではなく、事案ごとに判断されます。また、看護師としての品位を損する行為などについては、刑事罰がなくても処分対象となる場合があります。

 

Q2. 行政処分を受けたことは、一般の人でも確認できますか?

A. 処分に関する答申の概要は公表されていますが、個人の処分歴を氏名で確認できるとは限りません。
厚生労働省が公表する看護倫理部会の議事要旨では、処分の種類・件数・原因となった犯罪などを確認できます。ただし、確認した議事要旨には対象者の氏名や免許番号は掲載されていません。「処分を受けると必ず実名で公表される」とは説明できません。

 

Q3. 行政処分を受けた後、再び看護師として働くことはできますか?

A. 戒告であれば看護業務そのものは禁止されず、業務停止の場合も、停止期間の終了後は再び働くことが可能です。
ただし、命じられた再教育研修への対応が必要です。免許取消の場合は再免許を受ける必要があり、犯罪や品位を損する行為などを理由とした取消では、処分日から5年が経過したうえで、再び免許を与えるのが適当と認められる必要があります。

 

Q4. 医療事故を起こすと、必ず行政処分を受けますか?

A. 医療事故が起きたという事実だけで、必ず行政処分になるわけではありません。
行政処分の対象に該当するかどうかや処分の内容は、事故に関する事実関係、刑事処分の内容、注意義務の程度などを踏まえて判断されます。「ミスをしたら必ず免許取消になる」といった理解は適切ではありません。

 

8. まとめ:プロとしての責任を胸に、誠実な前向きの一歩を踏み出そう

看護師の行政処分(免許取消・業務停止・戒告)は、患者の生命と安全を守り、医療職全体の高い信頼性を維持するために設けられている極めて重い法的措置です。

日々の看護実践においては、常に命を預かるプロフェッショナルとしての倫理観をもち、法令や職場のルールを遵守した行動を徹底することが、自身の大切な看護師免許とキャリアを守る最高の盾となります。

万が一、過去に処分を受けた経験がある場合でも、必要な再教育研修へ真摯に取り組み、自らの行動を見つめ直して再発防止に努める姿勢があれば、再び現場で信頼を取り戻す道は開かれています。

転職や復帰に臨む際は、過去の事実から目を背けずに誠意をもって説明し、これからの看護に対する前向きな意欲と姿勢を伝えることが何より大切です。

判断に迷う点や不安がある場合は一人で抱え込まず、都道府県の担当窓口や専門の相談機関へ確認しながら、着実に再出発への一歩を踏み出していきましょう。

 

参考URL

医道審議会(保健師助産師看護師分科会看護倫理部会)

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