【2026年10月義務化】求職者・実習生へのセクハラ防止対策とは?医療・介護・福祉事業者が今すぐ進めるべき準備とチェックリスト

経営・採用 施設管理者
掲載日: 2026.09.08
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2026年10月1日施行の改正男女雇用機会均等法(ハラスメント防止対策の強化)により、従来の従業員間だけでなく、求職者・就活生・インターン・看護実習生・介護実習生等に対するセクシュアルハラスメント(セクハラ)防止対策が事業主に義務化されます。

医療・介護・福祉の現場では、採用面接だけでなく、施設見学、職場体験、看護実習・介護実習など、まだ雇用関係にない学生や求職者と職員が接触する機会が数多く存在します。

「まだ当施設の職員ではないから社内規程の対象外」という考え方は通用しなくなります。

本記事では、医療・福祉事業者や施設の人事・採用担当者が2026年10月に向けて具体的に何を準備・見直しすべきかを詳しく解説します。

 

目次

 

1.そもそも「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」とは?

求職者等に対するセクハラとは、事業主やその労働者による性的な言動によって、求職活動中・就職活動中の人物や実習生の就労・学習環境が害されることを指します。

今回の制度改正で最も重要なポイントは、被害対象が「すでに雇用されている従業員」に限られない点です。

1-1.対象となる「求職者等」の範囲

対象となるのは、例えば以下のような人です。

    • 施設や法人の求人に応募した中途求職者・新卒応募者
    • 就職説明会、施設見学、見学会に参加する学生・求職者
    • インターンシップや職場体験の参加者
    • 採用活動に関連してOB・OG訪問や職員面談を行う人
    • 看護実習生・介護実習生・教育実習生・作業療法士・理学療法士等の実習生
    • その他、職業選択や資格取得等のために実習・研修を行う人

つまり、雇用契約を締結する前であっても、採用活動や実習などを通じて事業者と接点を持つ人への対応が重要になります。

 

1-2.対面だけでなく「SNS・オンライン上」も対象

セクハラ対策で注意したいのが、面接室や施設内だけが対象ではないという点です。

例えば、以下のようなオンライン上のやり取りについても注意が必要です。

    • LINE
    • Instagram
    • X(旧Twitter)
    • その他のSNS
    • メッセージアプリ
    • オンライン面接ツール
    • メール

採用面接後に担当者が個人的なSNSで応募者に連絡を取る行為や、実習指導者が実習生に私的なメッセージを送る行為についても、事業者として明確な抑制ルールを設ける必要があります。

特に、職員個人のSNSやLINEを採用・実習の連絡手段として利用している施設は、施行前に運用を見直しておくことが重要です。

求職者等に対するセクハラとは

2.医療・介護・福祉現場で特に注意すべきハラスメント3つの場面

一般的な企業と比較して、医療・福祉現場では「距離の近さ」や「実習指導」という独自の接点があります。

そのため、特に以下の3つの場面で注意が必要です。

 

2-1. 採用面接での不適切な質問・性的な言動

人手不足解消や親しみやすさをアピールしようとするあまり、面接官がプライベートな質問をしてしまうケースがあります。

例えば、

    • 「お付き合いしている人はいるの?」
    • 「結婚や出産の予定は?」
    • 「採用されたら二人でご飯に行こう」

といった発言です。

「場を和ませるため」の世間話であっても、求職者が苦痛を感じたり、選考に影響すると感じたりすれば問題となる可能性があります。

そのため、面接官に対するマニュアル整備と研修が不可欠です。

 

面接時に避けるべき質問

特に、採用の適性・能力とは直接関係しない以下のような事項については、質問しないことを原則としましょう。

    • 恋愛関係
    • 結婚予定
    • 出産予定
    • 家族構成
    • 性的指向・性自認に関する事項
    • 私生活に関する過度な質問
    • 容姿や身体に関する不必要なコメント

採用面接では、「業務を遂行するために必要な情報か」という視点で質問内容をチェックすることが重要です。

 

採用面接での不適切な発言とは

 

2-2. 選考後・面接後の「個人SNS・LINE連絡」

近年、採用効率化のためにSNSを活用するケースが増えていますが、個人アカウントを用いた連絡には大きなリスクがあります。

例えば、

    • 応募者の個人アカウントを検索してダイレクトメッセージを送る
    • 業務時間外や深夜に私的なメッセージを送信する
    • 採用や内定をほのめかして食事やデートに誘う
    • 採用担当者が応募者と個人的な交流を続ける

といった行為です。

選考過程におけるやり取りは、原則として以下のような公式の手段に限定するルールを設けることが望ましいでしょう。

    • 採用管理システム(ATS)
    • 法人・施設の代表メール
    • 採用専用メール
    • 業務用アカウント
    • 法人が管理する連絡ツール

「採用担当者個人のLINEでやり取りする」という運用は、できる限り避けることが重要です。

 

採用選考後のSNSやLINE連絡

 

2-3. 看護実習・介護実習での「指導者と実習生」の関係性

医療・福祉実習では、指導者が実習生の評価や学習環境に大きな影響を与えます。

そのため、実習生は不適切な言動を受けても、

「評価が下がるかもしれない」

「学校に悪く報告されるかもしれない」

と考え、声を上げにくい場合があります。

例えば、

    • 「彼氏・彼女はいるの?」などのプライベートな追及
    • 「そんな服装・身だしなみだと指導しづらい」などの容姿に関する言動
    • 「評価を良くしてあげるから飲みに行こう」といった立場を利用した誘い
    • 実習時間外に個人的な連絡を繰り返す
    • 個人SNSやLINEの交換を求める

などには注意が必要です。

事業者は「他校の学生だから」と放置するのではなく、自施設の実習受入れ責任として、ハラスメントを防止する体制を整えることが重要です。

 

看護実習や介護実習でおきるハラスメント

3.医療・福祉事業者が準備すべき「求職活動等に関するハラスメント対策ルール整備」

厚生労働省の指針に基づき、事業者は採用面談や実習などにおけるハラスメント対策ルールをあらかじめ明確化し、関係者へ周知することが重要です。

特に医療・介護・福祉事業者では、以下の3つのルールを整備しておきましょう。

 

3-1. 面接・選考ルールの策定

例えば、以下のようなルールを設定します。

    • 面接は原則として施設内の指定会議室・面談室で実施する
    • 個室利用時はドアや窓の配置などに配慮する
    • 原則として複数名の面接官で対応する
    • 面接実施時間をあらかじめ設定する
    • 夜間・深夜の面接を禁止する
    • 面接官が個人的な連絡先を求めない
    • 選考後の私的な歓送迎会・飲食の場を設定しない
    • 採用判断と個人的な関係を明確に分離する

特に小規模な介護施設などでは、施設長や管理者が1人で面接を担当するケースもあります。

その場合でも、可能な範囲で面接記録を残すなど、「誰が・いつ・どのような面接を行ったか」が確認できる仕組みを整えておくと安心です。

 

3-2. 連絡・コミュニケーションルールの策定

求職者との連絡については、

    • 「代表メール」
    • 「採用専用システム」
    • 「業務用アカウント」

など、法人が管理できる手段に限定します。

また、

    • 職員個人のLINE・SNSアカウントによる連絡を原則禁止する
    • 業務や選考に関係のないプライベートな連絡を禁止する
    • 深夜・早朝の不要な連絡を避ける
    • 個人的な飲食・デート等への誘いを禁止する
    • 必要な連絡は記録として残す

といったルールを明文化しておきましょう。

 

③ 実習生受入ルールの策定

実習生については、採用活動とは別に受入れルールを設けることが重要です。

例えば、

    • 実習指導者を事前に指定する
    • 受入前にハラスメント予防研修を実施する
    • 指導者と実習生の個人的な連絡先交換を原則禁止する
    • 個人SNS・LINEによる私的なやり取りを禁止する
    • 実習評価と私的関係を完全に分離する
    • 指導者以外の第三者相談窓口を実習生に提示する
    • 実習生に対する不利益な取扱いを禁止する

 

ハラスメント対策ルールの明白化

 

4.ハラスメント相談窓口は「従業員用」の使い回しでは不十分

事業者は、求職者や実習生が利用できる相談窓口を設置し、事前に周知する必要があります。

例えば、社内イントラネットに掲載されているだけの「社員向け相談窓口」では、外部の求職者や実習生が利用できません。

そこで、以下のような場所にも相談窓口を掲載しておきましょう。

    • 採用Webサイト
    • 求人票ページ
    • 面接案内メール
    • 募集要項
    • 実習開始時のオリエンテーション資料
    • 実習受入れ時の説明資料

また、連携する大学・専門学校・看護学校等がある場合には、学校側の相談窓口との連携方法についても事前に確認しておくとよいでしょう。

 

4-1.相談窓口は採用・実習ラインから独立させる

採用担当者や実習指導者自身が相談窓口の担当者を兼務していると、被害者が相談しにくくなる可能性があります。

そのため、

    • 人事部門
    • コンプライアンス窓口
    • 法務担当
    • 法人本部
    • 外部相談窓口

など、採用・実習のラインから一定程度独立した相談先を用意することが重要です。

 

4-2.ハラスメント発生時の対応フローを事前に構築する

万が一、求職者や実習生からハラスメントの相談があった場合、迅速かつ適切な初期対応が必要です。

あらかじめ以下のような対応フローを決めておきましょう。

    1. 相談の受付
    2. 相談者の安全・心理的負担への配慮
    3. 事実関係の迅速かつ正確な確認
    4. 関係者へのヒアリング
    5. 被害者への適切な配慮措置
    6. 必要に応じた実習指導者の変更・配属部署の調整
    7. 学校側・関係機関との連携
    8. 行為者への適切な措置
    9. 再発防止策の策定
    10. 関係者への必要な範囲での周知

事実確認を行う際には、相談者のプライバシーに十分配慮する必要があります。

また、事実確認に協力した職員や他の実習生に対して、不利益な取扱いや嫌がらせが行われないよう、協力者保護の仕組みもあらかじめ定めておきましょう。

 

求職者等の相談窓口の個別設置

5.【Q&A】医療・介護・福祉現場の担当者が抱くよくある疑問

Q1. ハラスメント対策を怠った場合、事業者にはどのような罰則がありますか?

A. 直ちに刑事罰が科されるという制度ではありませんが、行政指導や企業名の公表、報告拒否・虚偽報告に対する過料などの対象となる可能性があります。

厚生労働省(都道府県労働局)から報告を求められた際に、虚偽報告や報告拒否をした場合には、20万円以下の過料が科される可能性があります。

また、是正勧告等に従わない場合には、事業者名が公表される可能性があります。

さらに、ハラスメント対策を十分に行っていなかったことによって被害が発生した場合には、民事上の損害賠償請求につながる可能性もあります。

医療・介護・福祉事業者の場合、SNS等で情報が拡散されることによる採用活動への影響や、施設の評判低下なども無視できません。

 

Q2. 実習生は学校(大学・看護学校等)に所属していますが、実習先の事業者にハラスメント防止措置義務が生じるのですか?

A. 実習受入れ先の事業者には、自施設の職員が実習生に対して行うセクハラを防止するための措置が求められます。

雇用関係がないことだけを理由に、実習先が何もしなくてよいということにはなりません。

学校側と連携し、実習生が安心して学べる環境を整えるとともに、実習生向けに施設の相談窓口を周知しておくことが重要です。

 

Q3. 採用面接で「結婚の予定」や「家族構成」を聞くことはセクハラにあたりますか?

A. 直ちにセクハラに該当するとは限りませんが、採用面接では避けるべき質問です。

性差別的な意図や私生活への過度な介入と受け取られる可能性があります。

また、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」においても、適性・能力に関係のない本人・家族の私生活に関する質問は配慮すべき事項とされています。

採用面接では、基本的に職務遂行に必要な適性・能力に関係する質問に限定することが重要です。

 

Q4. 既存のハラスメント相談窓口をそのまま使っても問題ありませんか?

A. 窓口自体を共通化することは可能ですが、「外部からアクセスできること」と「周知方法」の見直しが必要です。

例えば、社内イントラネット内にしか相談窓口の情報が掲載されていない場合、求職者や実習生は利用できません。

そのため、

    • 採用ページ
    • 求人ページ
    • 面接案内メール
    • 実習オリエンテーション資料

などに相談窓口のメールアドレスや電話番号を記載し、外部の人でも相談できる仕組みを整えておきましょう。

 

Q5. 応募者や実習生から相談があった場合、派遣元の学校や人材紹介会社へ連絡・共有すべきですか?

A. 原則として相談者のプライバシーに配慮し、必要に応じて本人の意向を確認したうえで学校等と連携して対応します。

相談者のプライバシー保護を優先しながら、実習環境の調整や事実確認のために学校側との連携が必要になるケースもあります。

例えば、

    • 実習指導者を変更する
    • 実習場所を変更する
    • 実習を一時的に中断する
    • 学校側と今後の対応を協議する

といった対応が考えられます。

あらかじめ、「学校等とどのような場合に、どの範囲で情報共有するか」について対応ガイドラインを定めておくと、相談が発生した際にもスムーズに対応できます。

 

6.【人事担当者用】2026年10月施行に向けた準備チェックリスト

施行日までに、以下の項目を確認しておきましょう。

 

ハラスメント防止方針

    • □ 求職者・実習生へのセクハラ防止方針を明文化し、全職員に周知している
    • □ 違反行為者には厳正に対処する旨を社内規程・就業規則等に明記している

 

採用・選考チェックリスト

    • □ 採用面接・施設見学・インターンシップの実施ルールを策定している
    • □ 面接官・採用担当者向けに不適切な質問防止研修を実施している
    • □ 面接時の質問項目を確認・整理している
    • □ 面接記録を適切に管理する仕組みがある

 

連絡・SNSルールチェックリスト

    • □ 応募者との連絡手段を業務用メール・採用ツール等に限定している
    • □ 個人SNS・個人LINEでのやり取りを原則禁止している
    • □ 業務・選考に関係のない私的な連絡を禁止している

 

実習生対応チェックリスト

    • □ 看護・介護実習指導者に対してハラスメント予防研修を実施している
    • □ 実習指導者と実習生の個人的な連絡先交換を原則禁止している
    • □ 実習評価と私的関係を明確に分離している
    • □ 実習生が指導者以外の第三者に相談できる体制がある

 

相談窓口チェックリスト

    • □ 求職者・実習生も利用できる相談窓口を設置している
    • □ 求人票・採用ページ・面接案内等で相談窓口を周知している
    • □ 実習オリエンテーション資料に相談窓口を記載している
    • □ 相談者のプライバシー保護・秘密保持の仕組みが整っている
    • □ 相談窓口担当者が採用・実習担当者から独立している

 

ハラスメント相談発生時の対応

    • □ 相談受付から事実確認までの対応フローがある
    • □ 被害者への配慮措置を定めている
    • □ 実習指導者の変更等が必要になった場合の対応方法を決めている
    • □ 学校・関係機関との連携方法を定めている
    • □ 行為者に対する措置の基準がある
    • □ 再発防止策を策定する手順がある
    • □ 事実確認に協力した職員等への不利益取扱いを禁止している

 

7.まとめ|「採用・実習の場」もハラスメント対策の重要領域へ

2026年10月1日以降、ハラスメント対策では、雇用後の職場環境だけでなく、採用選考や実習など、求職者等と事業者が接触する場面についても適切な対応が求められます。

特に人手不足に直面する医療・介護・福祉業界では、求職者や実習生への不適切な対応は、ハラスメント対策上の問題だけでなく、

    • 採用ブランドの低下
    • 応募者の離脱
    • 実習生の受入停止
    • 学校との関係悪化
    • SNS等による風評被害
    • 人材確保への悪影響

など、事業運営にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

施行直前に慌てることのないよう2026年10月の施行に向けて、既存のハラスメント防止規程の改定だけでなく、採用マニュアルの見直しや、求職者・実習生向け相談窓口の整備等、ハラスメント発生時の対応フロー構築を計画的に進めていきましょう。

 

 

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