2025年の最低賃金改定、私たちの給料や働き方はどう変わる?

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掲載日: 2025.08.21
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はじめに:
例年、夏に発表され秋頃(10月前後)から適用される最低賃金の改定。実は、介護・福祉業界で働く人の中には、最低賃金に近い時給水準で働いている方も少なくありません。
つまりこの金額の上下が、あなたの給料や働き方に、直接影響してくることも珍しくありません。
特に非正規雇用や時給制で働いている方にとって、最低賃金の改定は“自分のお金の話”として、他人事では済まされないトピックです。
今回のコラムでは、2025年度の最低賃金改定の動きと、それが実際の職場や働き方にどう関わってくるのか、そして「同一労働同一賃金」というもう一つの制度について整理します。

 

1.2025年度最新、最低賃金改定のニュースまとめ

①2025年度(令和7年度)の改定目安が発表されました

厚生労働省の「中央最低賃金審議会」は、2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金額改定の目安を取りまとめ、2025年8月4日に発表しました。 今年の目安は以下の通りです:

  • Aランク:63円引き上げ
  • Bランク:63円引き上げ
  • Cランク:64円引き上げ

これはあくまでも国が示す「目安額」であり、最終的な改定額は各都道府県の地方最低賃金審議会での審議・答申を経て決定され、公示されたうえで適用されます。

出典:厚生労働省 「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」

②最低賃金ってなんのためにあるの?

最低賃金とは、「これより低い賃金で働かせてはいけません」という法的な下限ラインです。
最低賃金法に基づき、雇用形態(正社員・パート・アルバイト・契約社員など)にかかわらず、すべての労働者に適用されます。

仮に、労働者と使用者が合意したとしても、最低賃金を下回る賃金は無効となり、自動的に最低賃金額が適用されます。
事業者が従わない場合、まずは是正指導が行われ、それでも改善されなければ50万円以下の罰金が科される場合もあります。

③最低賃金の金額はどうやって決まっているの?

最低賃金は、毎年、以下のようなステップで決まります:

  1. 中央最低賃金審議会(国レベル)が全国の改定「目安額」を決定
  2. 各都道府県の地方最低賃金審議会が地域の実情を踏まえて審議
  3. 正式な最低賃金額として決定し、公示 → 適用開始(例年10月前後)

議論の際には、以下の3つの要素が主に考慮されます:

  • 労働者の生計費
  • 労働者の賃金実態
  • 事業の賃金支払い能力(特に中小企業など)

「健康で文化的な最低限度の生活」を守れるかどうかを基準に、生活保護水準との整合性も検討されます。

④最低賃金が適用される対象者は?

最低賃金は、地域内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。

対象例:

  • 正社員
  • パートタイマー
  • アルバイト
  • 契約社員
  • 嘱託職員
  • 派遣労働者(派遣先地域の最低賃金が適用)

つまり、雇用形態や職種を問わず、「最低賃金以下では働かせてはいけない」というルールは共通です。

2.最低賃金が上がると何が起きる?

最低賃金の引き上げは、単に「給料が増える」だけの話ではありません。
経済や雇用、そして現場の働き方にも、さまざまな影響を及ぼします。特に、賃金が最低賃金に近い水準で設定されていることが多い介護・福祉業界では、その影響をより強く受ける可能性があります。

①労働者は給与が上がる人がいる一方で…

最低賃金は「時間額」で定められているため、時給制で働く人にとっては給与が直接的に増えることになります。
また、日給や月給で働く人でも、所定労働時間で割った結果、最低賃金を下回っていないかが確認されます。

特に、パートタイム労働者や有期雇用労働者といった非正規雇用が多い介護・福祉業界では、時給制が一般的です。
このため、最低賃金の上昇は、直接的な収入増につながるケースが多く見られます。実際、介護労働者の平均月収は5年連続で増加しており、時間給も前年度比で3.5%増となっています。

一方で、「賃金への満足度」を示す指標(D.I.=Diffusion Index)は依然としてマイナスで推移しており、収入が増えても不満が解消されていないという現実もあります。

参考:令和6年度 介護労働実態調査結果
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_roudousya_honpen1.pdf

②最低賃金の値上げは企業にとっては人件費の増加に

賃金引き上げは労働者の生活を守る重要政策ですが、同時に企業にとっては人件費増という負担になります。

特に中小企業や小規模事業者では、「コスト増を価格に転嫁できない」「経営が厳しい」といった声もあり、採用抑制や経営悪化の要因の一つとして指摘されます。

政府はこうした企業を支援するために、以下のような助成金制度を推奨しています:

  • 業務改善助成金(賃金を引き上げる企業に、設備投資やICT導入などを支援する制度)
  • キャリアアップ助成金(非正規雇用労働者の処遇改善や正社員化を支援する制度)

介護・福祉の現場でも、記録ソフトやICT導入などで業務改善助成金が活用されることがあります。
またキャリアアップ助成金では、正社員化や教育訓練の実施を通じて処遇改善を進める取り組みに活用できます。

こうした制度をうまく活用することで、働く人の待遇改善と、事業の持続性を両立していくことが期待されています。

③最低賃金があがると業界によっては“プラスとマイナス”の両面が

もともと人手不足が深刻な業界では、最低賃金の引き上げによって、さまざまな影響が出ることが考えられます。
その影響は一方向ではなく、プラス面とマイナス面が混在しているのが実情です。

プラスの影響

  • 賃金水準の向上
    →給与面の改善が進み、人材の確保や職員の定着にプラスとなる可能性があります。
  • モチベーションの向上
    → 賃金が上がることで、処遇への満足度が高まり、離職防止にもつながることが期待されます。

マイナスの影響

  • 人件費の増加
    → 事業所によっては、採用を控えたり、従業員数を調整する動きが出る可能性もあります。
  • 「年収の壁」による労働時間の調整
    → 社会保険料の負担を避けるために、労働者があえて勤務時間を減らすことで、かえって人手不足が悪化する懸念もあります。

このように、最低賃金の改定は単なる「金額の話」ではなく、働き方全体にかかわってきます。

3. “同じ業務内容なのに待遇が違う?”という疑問をもったことはありませんか?

最低賃金が上がると、たしかに収入が増える人も出てきます。しかし、それで「待遇に対する不満」がすべて解消されるかというと、実はそうでもありません。

ここで重要になるのが、「同一労働同一賃金」という考え方です。これは、「正社員(無期フルタイム)」と「非正規雇用(パート・有期・派遣など)」の間にある、不合理な待遇差をなくしていこう、という制度です。

「正社員と同じような仕事をしているのに、給料や手当が全然違う。これってどうして?」
といったモヤモヤを、できるだけ減らすための仕組みなんですね。

この制度では、以下の3点をもとに、待遇の差が「不合理ではないか」を判断します:

  • 職務の内容(どんな仕事をして、どのくらい責任があるか)
  • 配置変更の範囲(異動や昇進の可能性など)
  • その他の事情(経験・能力・成果など)

最低賃金はあくまで「最低限、これだけは払って」という金額の話です。しかしそれだけでは、すべての待遇格差を埋めることはできません。

たとえば、最低賃金を上回る時給であっても、「正社員には賞与や手当があるのに、自分には何もない」と感じることもあります。

前述のように、介護労働者の平均時給は上昇傾向にある一方、「賃金に対する満足度」は依然としてマイナスの水準にとどまっています。これは、「金額が上がっただけでは納得感が得られない」状況を示しています。

最低賃金の引き上げによって、企業の人件費は増えます。そうなると、企業側もコストに見合った制度の見直しを迫られます。つまり、待遇の差が「説明できるものか」どうかが、より問われるようになるのです。

4.最低賃金の改定が自分の働き方に向き合うタイミングになる

最低賃金の引き上げは、働く私たちにとって非常にポジティブなニュースです。特に、時給で働く方々にとっては、手取りの増加に直結するからです。労働者の生活を支え、購買力を維持する上でも、この流れは歓迎すべきものと言えるでしょう。

ただし、一言で「賃金」といっても、雇用形態や働き方によって、その中身や受けられる恩恵は大きく異なります。最低賃金はあくまで“法律で決められた最低ライン”にすぎません。それをクリアしていればすべて問題なし、というわけではありません。

たとえば、前にも触れたように、介護労働者の平均時給は増えていても、「賃金に対する満足度」は依然として低い水準にあります。つまり、“金額”だけでなく、“納得感”のある待遇が求められているということです。

① 最低賃金以外にも「同一労働同一賃金」の視点も持っておく

ここで意識したいのが、「同一労働同一賃金」の視点です。たとえ最低賃金が上がったとしても、正社員と非正規雇用(パート・有期・派遣など)の間で、賞与や各種手当、福利厚生、教育訓練などの待遇差が残る場合があります。

法律では、企業が待遇に差を設ける場合、その根拠は「職務内容」「責任」「経験」などに基づく必要があります。単に「正社員だから」「将来性があるから」といった抽象的な説明はNGです。

② 最低賃金改定を機会に自分の働き方を見直してみよう

最低賃金が上がる今だからこそ、自分の働き方や契約条件を見直すチャンスでもあります。以下の視点で、自分の労働環境を確認してみましょう。

  • 雇用形態と仕事内容を把握する
    自分がどんな立場(正社員、パート、有期、派遣など)で、どんな業務をしているのか、整理してみましょう。
  • 待遇差の根拠をチェックする
    厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」を参考に、自分の待遇が合理的かを客観的に見てみましょう。
  • 会社に説明を求めてみる
    正社員と待遇が違う理由は何か? 企業はその説明責任を負っています。気になる場合は、説明を求めることができます。
  • 相談窓口を活用する
    納得できない場合は、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」などに無料で相談できます。
  • キャリアアップも選択肢に
    「無期転換ルール」という制度があります。これは、有期契約で通算5年を超えて働いた場合、労働者が申し込めば無期雇用に転換できる仕組みです。長く働きたい人にとって、より安定した働き方を目指す一つの方法になります。

最低賃金の改定は、私たちの働き方に大きく関わる重要な出来事です。ただ「金額が上がった」で終わらせず、自分自身の働き方や職場環境と向き合うきっかけにしてみてください。

そしてもし、今の職場に少しでも「合っていないかも」「別の働き方も検討したい」と感じているなら、このタイミングで自分に合った働き方を考え直してみるのも一つの方法です。

5. 転職活動とJobSoel(ジョブソエル)の活用

医療・介護分野での転職には、専門の求人情報プラットフォームであるJobSoel(ジョブソエル)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

JobSoelでは、全国の医療福祉に関する職種の求人情報を検索できるほか、施設の雰囲気や具体的な取り組みを知ることができます。

新しい職場での働き方や成長のチャンスを具体的にイメージしながら転職活動を進められるので、安心して検討できますよ。

自分に合った職場を見つける一助として、ジョブソエルを活用してみてください。効率的に転職活動を進めるための心強いツールとなるでしょう。

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6.まとめ  

最低賃金が上がるというニュースは、働く人にとって心強い動きです。とくに、時給で働く非正規雇用の方にとっては、給与に直結する変化として歓迎されるでしょう。

一方で、「最低賃金をクリアしていればOK」という話ではなく、「その先の待遇はどうか?」「仕事内容と賃金のバランスは取れているか?」といった視点がこれからますます重要になってきます。

最低賃金は“ルールの最低ライン”でしかありません。そこに“納得感”を持てるかどうかは、自分の働き方や職場の制度次第です。

今回の最低賃金改定や「同一労働同一賃金」のルールは、単に制度の話ではなく、「自分はどんな働き方をしたいか?」「どんな待遇が自分に合っているか?」を考えるきっかけにもなります。

もし今の働き方や職場に違和感があるなら、それは決してわがままではありません。そう感じたこと自体が、見直すサインかもしれません。情報を集め、制度を知り、より納得できる働き方を目指していきましょう。

 

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