介護の仕事がつらい…辞めたいのは“甘え”じゃない|最新データで読み解く現場の本音
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人手不足で心身ともにギリギリの毎日。職場の人間関係に悩んだり、理想のケアとのギャップに戸惑ったり…。
まじめに頑張る人ほど「こんな気持ちは甘えなのかな」と自分を責めてしまいがちです。
でも実際には、同じ気持ちを抱えている人は決して少なくありません。今回は厚生労働省「令和5年度 介護労働実態調査」の結果をもとに、「何が辞めたい原因になるのか」「その背景にはどんなつらさがあるのか」をデータで整理していきます。
あなたのモヤモヤを整理して、「じゃあ自分はどうすればいいか?」を一緒に考えてみましょう。
目次
1.みんな“辞めたい”と思ったことがある
介護職を辞めた理由、トップは「人間関係」
令和5年度介護労働実態調査によると、直前の介護職を辞めた人の理由のトップは「職場の人間関係に問題があったため」(34.3%)です。
「人間関係がつらい」の中身は?
「人間関係」と一言でいっても、その背景はさまざまです。
具体的には…
- 上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった(49.3%)
- 上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった(43.2%)
- 同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど)でストレスがあった(38.8%)
「頑張れば何とかなる」では済まない理由が多いことが分かります。
理念や運営のズレが負担になることも
人間関係だけでなく、職場の方針にモヤモヤを感じている人も多くいます。
- 経営の効率性やリスクを過度に重視しているため、介護の質の向上の取り組みが二の次になっていた(30.9%)
- 介護の質の向上の手法・方向性が自分の理想とは異なってた(30.6%)
- 無駄な業務が多く職員の業務量負担への配慮が弱かった(30.0%)
理想のケアをしたいのに現場でのギャップに疲れた、そんな声が数字から見えてきます。
賃金や働き方の不安
「働く上での悩み」としては…
- 人手が足りない(49.9%)
- 仕事内容の割に賃金が低い(37.5%)
- 身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)(29.3%)
- 精神的にきつい(22.5%)
- 健康面(新型コロナウイルス等の感染症、怪我)の不安がある(22.5%)
などがあり、一つだけでなく複数の悩みが重なっている人も多いのが現状です。
「辞めたい」には理由がある
これらのデータから分かるのは、「辞めたい」と感じるのは決して特別ではなく、多くの人が似たような苦しさを抱えているということです。頑張っているからこそ追い詰められてしまう結果です。あなたも、心当たりはありませんか?まずは「自分の辞めたい気持ちには理由があるんだ」と受け止めるところから始めましょう。
2. どんな“つらさ”が多い? 自分の状況を整理する
「辞めたい」と思うとき、理由は一つだけではありません。体力的な負担、人間関係のストレス、夜勤で眠れない日々…。
どこに一番負担を感じているかを整理してみるだけでも、「何を変えればいいのか」が少しずつ見えてきます。
半数が悩む「人手不足」と「報われにくさ」
介護現場で最も多い悩みは「人手が足りない」(49.9%)、次に多いのは「仕事内容のわりに賃金が低い」(37.5%)です。
「頑張りが報われにくい」と感じる人が多い様子が読み取れます。
主任クラスでは「人手不足」を感じる割合が60%を超えており、責任を担う立場ほど人手不足の負担を強く感じています。.jpg)
体と心の負担はダブルでのしかかる
介護職員の約4割(39.1%)が「身体的負担が大きい」と感じており、特に施設系(入所型)では45.6%とさらに高くなっています。
「腰を痛めたら終わり」という不安を抱えながら、精神面でも「きつい」と感じる人が22.5%。さらに「有給休暇が取りにくい」と答えた人も20.5%いました。.jpg)
「人手不足と休めなさ」がセットになると、回復する余裕すらなくなってしまいます。
仕事を支える「人間関係」も大きな壁に
「職場での人間関係について特に悩み、不安、不満等は感じていない」と答えた人は36.3%。裏を返せば6割以上は何らかの不安や不満を抱えてることになります。
具体的には……
- 自分と合わない上司や同僚がいる(19.3%)
- 部下・後輩の指導が難しい(18.5%)
- 経営層や管理職等の管理能力が低い、業務の指示が不明確、不十分である(17.7%)
小さなすれ違いが毎日の重荷になっている人も多いのが現状です。
利用者さまやご家族さまとの関係で心がすり減ることも
失敗への怖さも根強くあります。また、理不尽な言動に心がすり減る場面は少なくありません。
- 利用者に適切なケアができているか不安(35.2%)
- 介護事故(転倒、誤嚥、その他)で利用者に怪我をおわせてしまう不安(22.3%)
- 利用者や家族からの暴言を受けた(21.6%)
- 介護保険外のサービスを求められた(16.9%)
夜勤と長時間勤務が心身を削る
深夜勤務が「ある」と答えた人は全体で27.3%です。
施設系では約7割が夜勤を担当し、仮眠については「十分とれる」と答えた人はわずか14.7%にとどまりました。 一方で「取れない」と感じている人も約3割おり、多くの人はある程度は取れるが十分ではないと感じているのが現状です。
何に一番負担を感じていますか?
辞めたい気持ちを「甘え」と片付ける必要はありません。
人間関係、体力、夜勤…あなたはどれに当てはまりますか?どこが変われば楽になりそうですか?
データで見つめることで、「自分が一番しんどいのはどこか?」「何を変えれば負担を減らせるか?」を整理するきっかけにしてください。
3.辞めたいときにできることは一つじゃない
「もう限界かも…」と感じたとき、すぐに辞めるという選択だけが正解とは限りません。
いまの職場で試せる工夫や制度を知っておくと、「何を変えれば負担が減らせるか」が見えてくるかもしれません。 実際に、介護の現場では働きやすさを支える仕組みが少しずつ整ってきています。
スキルアップ研修で自信を取り戻す
仕事の中でつまずきを感じたとき、スキルアップや知識の習得が「頑張れるかもしれない」と思える支えになることがあります。
特に介護現場では「感染症対策」「認知症の理解」「事故防止・安全対策」など、日々の業務で役立つテーマの研修が役立ったという声が多く挙がっています。
- 感染症(43.3%)
- 認知症の基礎理解(42.9%)
- 事故防止、安全対策(リスクマネジメント)(39.5%)
- 認知症ケア(対応方法)(37.8%)
- 終末期ケア(22.3%)
「精神保健」「薬の知識」など、これから学んでみたいという声も多く挙がっており、知識を広げて安心感を得たい人が増えています。知識を増やすことで「自分のせいじゃなかったんだ」と気づける人もいます。
人間関係の改善に向けた取り組みも進んでいる
「辞めたい理由」で最も多いのは、やはり人間関係です。
その改善に向けた取り組みを行っている職場も増えています。
- ハラスメントのない人間関係のよい職場づくりをしている(37.8%)
- 仕事の内容は変えずに、労働時間や労働日を本人の希望で柔軟に対応している(35.9%)
- 職場のミーティング等で、介護の質を高めるための価値観や行動基準を共有している(33.8%)
- 仕事上のコミュニケーションの円滑化を図っている定期的なミーティング、上司との意見交換会など(30.7%)
例えば「上司と定期的に面談をして、気持ちを聞いてもらえるだけでも違う」と感じている人もいます。人間関係のストレスを一人で抱え込まないために、職場内でのミーティングや価値観のすり合わせといった工夫が少しずつ浸透しています。
介護ロボットやICTで負担が軽くなる現場も
業務量や身体負担がつらいときには、ロボットやICTの活用が助けになる場合もあります。
記録や情報共有の効率化、夜間の見守りなど、負担を減らす工夫は少しずつ広がっています。

導入しても「すぐに全てが楽になるわけではない」と感じる声もありますが、「記録の時間が短くなった」「夜間の巡視回数が減った」という意見も増えています。自分だけが頑張るのではなく、仕組みを活用するのも一つの方法です。
どうしても難しいなら環境を変えていい
今の職場で試せそうなことはありましたか?
もちろん、どんな工夫をしてもつらいままなら、無理をする必要はありません。
環境を変えるのは逃げではありません。小さな変化で状況が好転することもあれば、思い切って新しい環境に進むことが正解になる場合もあります。
4. 迷ったときには“次の道”を考えてみる
「もう辞めたい」と思ったとき、「でも辞めた後どうすればいいんだろう」と不安になる人は少なくありません。実際に、介護の現場では人間関係や職場の運営方針が合わなくて辞める人が多いというデータがあります。
だからこそ、「いつでも別の道がある」と思える“逃げ道”を持っておくことは、自分を守る上でも大切です。
令和5年度の調査では、介護職の就職経路として
- 友人・知人からの紹介(35.3%)
- ハローワーク(20.1%)
- 求人情報サイト(8.1%)
つまり、多くの人が何らかの形で「次の職場」を探すとき、誰かに相談したり、ネットで求人を調べたりするのは当たり前の時代です。
もし転職するなら、どんな条件を大事にしたいですか?自分がどんな条件なら続けられるか、何を変えたいかを整理しておくと、行動しやすくなります。医療福祉専門の『JobSoel』のように、希望条件に合う職場情報をチェックできるサービスに登録しておくのも一つの備えです。
5.医療福祉の採用プラットフォーム『ジョブソエル』とは
医療福祉の採用プラットフォームジョブソエル(JobSoel)は、日本全国の医療福祉業界に携わる50種類以上の職種、求人企業の採用に関する様々な情報を掲載。
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6.まとめ
「もう辞めたい」「つらい」と感じるのは、一生懸命やってきた証拠です。頑張っている人ほど、理想と現実のギャップに悩み、心も体も限界まで働いてしまいがちです。
今回の調査でも、人間関係や職場の方針、体力的負担や休めない勤務環境など、「辞めたい理由」は一つではなく、いくつも重なっていることがわかります。
だからこそ大切なのは、自分だけを責めることではなく、状況を整理して「どこを変えれば自分は楽になるのか?」を見つけることです。
今の職場で改善できることがあるかもしれないし、どうしても無理なら環境を変える選択肢を持っていてもかまいません。
辞めることは“逃げ”ではなく、“自分を守るための手段”です。大切なのは、あなた自身が「どうありたいか」をちゃんと決めてあげることです。
参考:公益財団法人介護労働安定センター:令和5年度 介護労働実態調査
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/

 
                         
                         
                         
                         
                        