2025年度も全都道府県で地域別最低賃金の答申が出そろいました。答申とはなにか?
いいね

2025年9月5日、厚生労働省が2025年度の地域別最低賃金について答申を公表しました。
ただし、この時点では最低賃金額が正式に決定したわけではありません。
では、「答申(とうしん)」とはどういうものなのでしょうか。
目次
1.最低賃金改定でも使われる 「答申(とうしん)」 の意味
あまり聞きなれない答申ですが、どのような意味をもつのでしょうか。
答申とは、行政機関や審議会、専門委員会などが、諮問(しもん)に対して出す意見や結論をまとめた文書 のことです。
「諮問」とは、国や都道府県の機関が「この件について検討して意見をください」と依頼すること。
その依頼に対して調査・審議を行い、正式にまとめて提出するのが「答申」です。
2.地域別最低賃金の「答申」に効力はない
最低賃金についての答申の場合下記のような意味になります。
厚生労働大臣または都道府県労働局長が、各地の「地方最低賃金審議会」に対して「来年度の最低賃金をどうするか、検討してください」と諮問します。
審議会は、労働者代表・使用者代表・公益代表が議論して、引き上げ額などを決めます。
その結論を 「答申」としてまとめ、厚生労働大臣や労働局長に提出します。
答申後、正式に告示されて施行されることで、新しい地域別最低賃金が効力を持ちます。
つまり「答申」は、審議会が最低賃金額についてまとめた“答え”の報告書であり、実際に法律上の効力を持つのはその後の「告示」です。
3.地域別最低賃金の発効とは
「地域別最低賃金の発効」とは新しい最低賃金が実際に法的効力を持って適用され始めること をいいます。厚生労働大臣(全国)または都道府県労働局長(地域ごと)が、最低賃金審議会に「来年度の最低賃金をどうするか」検討依頼を出し、審議会が審議し、結論(例:◯円引き上げ)をまとめて提出します(答申)。 都道府県労働局長が「○月○日から地域別最低賃金を◯円とします」と官報や公示で正式に発表することで、“ルール”として確定されます。発効は、告示で定められた施行日から、新しい最低賃金が実際に働くすべての労働者に適用される日のことです。(例:10月1日発効 → その日以降の賃金計算に新しい金額が適用される)
ポイントは、
「告示」=ルールを発表すること
「発効」=ルールが効力を持ち始めること
4.地域別最低賃金の発効日にばらつきがあるのはなぜか
2025年度の答申状況一覧を確認すると、地域別最低賃金の「発効日」は都道府県ごとに
2025年10月から2026年3月と差があります。これには次のような理由があります。
1. 手続きの進み具合が地域ごとに違う
最低賃金は、先にも説明した通り都道府県労働局ごとに 地方最低賃金審議会 で審議 → 答申 → 告示 → 発効 という流れで決まります。
答申の時期や、その後の告示準備(官報・広報などへの掲載手続き)が地域ごとに多少異なるため、発効日がそろわないことがあります。
2. 公示から発効までの猶予期間(周知期間)
最低賃金は、労使双方が準備できるよう 告示から発効まで一定の日数(通常30日程度)を設ける 決まりがあります。
告示日が地域によって前後するため、結果的に発効日もバラつくことになります。
3. 行政上の都合や調整
官報や広報媒体への掲載スケジュール、都道府県ごとの行事・業務の進み方によっても時期がずれることがあります。
ただし大きな開きはなく、例年は10月頃に全国で順次発効 しますが、今年度は様々な要因が重なり発効日に開きがでているようです。
5.自社の給与額が最低賃金を下回っていないか確認
では、地域の最低賃金額が分かったら、企業の人事担当者は求人票の内容を確認する必要がでてきますが、どの部分を確認したらよいのでしょうか。
1. 対象となる労働者を確認
最低賃金額のチェックは、正社員、パート、アルバイト、契約社員など すべての労働者が対象となります。もちろん雇用しているすべての労働者ですので、試用期間中の従業員も対象となります。
2. 賃金に含める・含めない項目を区別し確認
最低賃金に算入する金額は、給与に含まれる全額ではありません。最低賃金に算入する金額は下記になります。
- 基本給
- 能率給・出来高払など毎月定例で支払われる手当
下記は毎月定例で支払われるものではないため、最低賃金の参入に含むことができません。
- 時間外手当(残業代)
- 深夜割増
- 休日割増
- 賞与・臨時の手当
- 通勤手当
最低賃金は、あくまで「所定労働時間の通常の賃金」で比べる必要があります。
3. 最低賃金に算入する金額を時給に換算
次の計算式で「実際の時間当たりの賃金」を出します。
時間当たり賃金=(基本給+毎月定例で支払う手当)÷所定労働時間
月給制の場合は下記の計算になります
(月給額÷月の所定労働時間)=時給換算額
日給制の場合は下記の計算になります
(日給額÷1日の所定労働時間)
4. 最後に地域別最低賃金額と比較
計算した「時間当たり賃金」が、会社の所在地の 地域別最低賃金額以上になっているか 確認してください。もし下回っているようであれば、差額を引き上げる必要があります。社内で給与を再検討しましょう。
6.まとめ
いかがでしたか?毎年変更される地域別最低賃金額。労働者は賃金があがるメリットがありますが、雇用する側は毎年改定が必要があるなど、手放しで喜べない部分でもありますね。 ジョブソエルへ掲載の企業の皆様も、今年度の最低賃金改定の告示を前に、今一度自社の求人票の見直しをお願いいたします!

 
                         
                         
                         
                         
                        