登録ヘルパーという働き方──自分の時間に合わせて続ける訪問介護

介護の仕事
掲載日: 2025.11.13
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はじめに:

介護の仕事を続けたいと思っても、「フルタイムは難しい」「家庭との両立ができない」と感じて働き方を迷う人は少なくありません。そんな中で、自分の生活リズムに合わせて働ける方法として広がっているのが登録ヘルパーという形です。

登録ヘルパーは、訪問介護の仕事を中心に、希望する曜日や時間を登録し、その範囲で仕事を受ける仕組みです。

今回は登録ヘルパーの働き方や仕事内容、常勤・パートとの違い、働くうえで知っておきたいポイントを整理します。
「自分のペースで介護の仕事を続けたい」「家庭と両立しながら働きたい」という方にとって、登録ヘルパーという選択肢を考えるきっかけになれば幸いです。

 

1. 登録ヘルパーとは?

登録ヘルパー(登録制ヘルパー)とは、訪問介護事業所に「働ける曜日や時間帯」をあらかじめ登録し、その枠内で仕事を受ける働き方です。勤務日は固定ではなく、利用者の希望と自分の登録時間が合えば、仕事が割り振られる仕組みです。

自由度が高い一方で、登録しても必ず仕事が入るとは限らないため、希望する時間帯や案件数によって働き方や収入は変動します。

登録ヘルパーは派遣社員とは異なり、訪問介護事業所と直接の雇用契約を結ぶのが一般的です。契約形態は有期雇用で、賃金は実際にケアを実施した時間に応じて支払われます。事業所によっては業務委託契約の場合もあります。

仕事は、在宅で生活する高齢者や障害のある方への訪問介護です。自宅から利用者宅へ訪問し、介護サービスを行います。

登録ヘルパーは、利用者さまへの支援に集中できる働き方であり、書類作成やスタッフ管理などの業務は基本的に担当しません。「介護が好き」「一人ひとりと丁寧に関わりたい」という人にも向いている働き方です。

ただし、サービス提供責任者や管理者のような職種へのステップアップは限られます。登録ヘルパーは現場業務が中心となるため、マネジメント経験を積みたい場合は、正社員などの常勤勤務を選ぶ必要があります。

2. 常勤・パートとの違い

登録ヘルパーは、訪問1件ごとに勤務が区切られ、1回の訪問はおおよそ30〜60分。移動を含めても1日数時間だけ働くこともでき、短時間勤務を積み重ねて収入を得るスタイルです。勤務が細切れになるぶん、フルタイム勤務のような安定感は得づらいものの、「時間に縛られない働き方」が可能です。

給与は、訪問1件ごとまたは時間単位で支払われます。時給は比較的高めに設定されていることが多く、早朝・夜間・土日勤務などでは加算がつく場合もあります。また、身体介護のほうが生活援助より単価が高いなど、業務内容によって報酬に差があります。

これに対して、正社員は週5日前後のフルタイム勤務が基本です。パート職員は決まった曜日や時間に出勤する固定シフト制が多く、登録ヘルパーのように毎週スケジュールを変えることはあまりありません。

収入面では、正社員やパートは時給や月給が一定で、毎月の見通しを立てやすい働き方です。登録ヘルパーは柔軟に働ける反面、仕事量によって月ごとの収入が変動しやすい点が異なります。

社会保険は、登録ヘルパーも勤務状況によっては加入対象になります。ただし、短時間勤務が中心の場合は加入要件を満たさないこともあり、その場合は国民健康保険や国民年金に個人で加入します。労災保険はこれらすべての勤務形態で適用されます。
登録ヘルパーは「柔軟さ」と「安定性」のどちらを重視するかで評価が分かれる働き方です。

3. 仕事内容と1日の流れ

登録ヘルパーの仕事内容は、常勤やパートの訪問介護員と基本的に変わりません。利用者さまのご自宅を訪問し、ケアプランに沿って必要な支援を行います。主な業務は「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに分けられます。

〈身体介護〉
利用者さまの身体に直接触れて行う支援です。

  • 食事介助(食事の支援、水分補給の介助)
  • 入浴介助(シャワー浴・清拭など)
  • 排泄介助(トイレ誘導・おむつ交換)
  • 更衣介助・移乗介助・体位変換
  • 服薬介助や就寝・起床の支援

〈生活援助〉
日常生活の家事を支援するサービスで、利用者さまの生活環境を整えます。家族の部屋を掃除したり家族分の食事を作ったりするなど、利用者さま本人以外への支援は含まれません。

  • 掃除・洗濯・調理・買い物代行
  • ベッドメイキングや衣類の整理
  • 薬の受け取り、簡単な片づけなど必要に応じた日常的なサポート

〈通院等乗降介助〉
通院や外出の際に、車の乗り降りや移動を支援します。送迎後の病院内介助は原則として医療スタッフが行うため、ヘルパーの支援は自宅~病院の移動区間が中心です。

訪問と訪問の間には移動が発生しますが、移動時間の扱いや交通費の支給方法は事業所ごとに異なります。

多くの事業所では移動時間を勤務時間として扱い、最低賃金以上の水準で計算していますが、訪問時とは異なる単価を設定するケースもあります。

1日のスケジュール例を挙げると、次のようになります。

時間 業務内容
8:50~ 移動(自宅から)
9:00~9:30 Aさん宅:おむつ交換・整容・水分補給
9:30~9:45 移動
9:45~10:45 Bさん宅:居室・トイレ・浴室の掃除
10:45~ 自宅へ移動・休憩
12:50~13:00 移動
13:00~14:00 Cさん宅:入浴介助
14:00~14:30 休憩・移動
14:30~15:30 Dさん宅:トイレ介助・買い物代行
15:30~15:40 自宅へ移動・退勤

業務後は、実施した内容や利用者さまの様子を記録し、事業所へ報告します。最近では、スマートフォンやタブレットで報告を行う事業所も増えており、短時間勤務でもスムーズに業務を終えられるよう工夫されています。

4. 登録ヘルパーの働き方と収入に関する疑問

登録ヘルパーは「自分のペースで働ける」と言われますが、実際はどうなのでしょうか。
ここでは、登録ヘルパーを検討している方がよく感じる疑問に沿って、現場の実情を整理してみましょう。

Q1:本当に時間は自分で決められる?

勤務時間は、あらかじめ事業所に「働ける曜日・時間帯」を登録しておく形です。その範囲の中で、事業所が利用者さまのスケジュールに合わせて仕事を割り振ります。
つまり「完全に自由に働ける」わけではなく、登録した時間帯に“依頼があるかどうか”で実際の勤務が決まる仕組みです。朝や夕方など訪問依頼が集中しやすい時間帯を選ぶと、仕事を受けやすくなる傾向があります。

Q2:収入が安定しないのでは?

訪問件数によって月の収入が変動します。時給が高めの身体介護や早朝・夜間・土日の訪問を中心に入れることで、ある程度安定して稼ぐ人もいます。
入院・契約終了・当日キャンセル等で減ることがありますが、事業所によってはキャンセル手当や移動手当が設けられている場合もあります。

Q3:社会保険は入れる?

勤務状況によっては、社会保険や雇用保険の加入対象になります。

  • 雇用保険
    • 週20時間以上勤務
    • 31日以上の雇用見込み
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)
    • 原則:常勤の4分の3以上で加入
    • 短時間の特例(2024年10月以降:51人以上の事業所)
      • 週20時間以上勤務
      • 月額賃金8.8万円以上
      • 2カ月超の雇用見込み
      • 学生ではないこと

上記に満たない場合は、国民健康保険・国民年金に個人で加入します。労災保険は全員が対象です。

Q4:未経験やブランクがあっても働ける?

登録ヘルパーとして働くには、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)以上の資格が必要です。この資格を持っていれば、訪問介護の仕事に従事することができます。

一方で、未経験やブランクがある場合に働けるかどうかは、事業所や求人内容によって異なります。
多くの事業所では、採用後に「同行訪問(OJT)」を実施し、先輩職員と一緒に現場を回りながら業務を覚える体制を整えています。ブランクがある場合も、生活援助中心の業務からスタートするなど、段階的にステップアップしていくことができます。

5. 登録ヘルパーという働き方が向いている人とは

どんな人がこの働き方と相性が良いのでしょうか。ここでは、生活の状況や働く目的別に見ていきましょう。

【向いている人】

子育て中の人
保育園や学校の時間に合わせて働けるため、朝と午後のスキマ時間を活かせます。子どもの送り迎えや行事の日も予定を調整しやすく、家庭との両立がしやすい働き方です。

家族の介護をしている人
家族がデイサービスに行っている間に1〜2件訪問するなど、生活の中で無理のない範囲で働くことができます。

ダブルワークを考えている人
他の仕事を持ちながら、夜間や休日だけなど空いた時間に仕事を入れることができます。 早朝や夜間など訪問需要が高い時間帯を選べば、短時間でも収入につなげやすくなります。

ブランクから復帰したい人
しばらく介護の現場を離れていた人でも、生活援助中心の仕事から再スタートできます。同行訪問などのサポート体制を通じて、少しずつ感覚を取り戻すことができます。

定年後も無理なく働きたい人
体力や生活リズムに合わせて勤務時間を調整できるため、60代・70代のヘルパーも多く活躍しています。

【合わないかもしれない人】

安定した働き方を求める人
登録ヘルパーは訪問件数によって収入が変動するため、一定の月収を維持したい人にはやや不向きです。短時間勤務では社会保険の加入条件を満たせないこともあります。

安定した収入や社会保険の加入を重視する場合は、正社員やパート勤務のほうが適しています。

チームで働く環境を求める人
直行直帰が多く、他の職員と関わる機会が限られます。職場の仲間と協力しながら働きたい人には、施設やデイサービス勤務のほうが働きやすいでしょう。

マネジメント業務に関わりたい人
登録ヘルパーは、利用者さまへの介護に専念できる働き方です。事務作業や職員管理などのマネジメント業務は基本的に担当しないため、サービス提供責任者や管理者を目指すキャリアにはつながりにくいです。

登録ヘルパーの働き方は、「どれだけ自由に働きたいか」「どの程度の安定を求めるか」で印象が変わります。

6. 登録ヘルパーとして働く前に確認しておきたいこと

登録ヘルパーは、事業所ごとに契約やサポート内容が異なります。働き始めてから戸惑わないためにも、面接や見学の段階で確認しておきたい点を整理します。

①契約内容と報酬体系

登録ヘルパーは、事業所と直接雇用契約を結ぶ形が一般的です。 3カ月や6カ月単位の更新制になっていることもあるため、継続して働きたい人は更新時期や更新条件を把握しておきましょう。

給与の支払い方法は事業所によって異なり、訪問1件あたりの定額制または勤務時間に応じた時給制のいずれかが採用されています。時給制の場合は、移動時間や待機時間など、どこまでを勤務時間とみなすかが事業所ごとに異なります。

また、交通費の支給についても、「1件ごとに定額」「距離に応じた支給」「支給なし」など、対応に差があるため、就業前にしっかり確認することが大切です。

報酬単価は時間帯や業務内容によって変動します。早朝・夜間・休日は加算がつくことが多いため、自分の働ける時間帯と単価の関係を知っておくと、働き方の計画を立てやすくなります。

②研修・同行体制

登録ヘルパーとして働く際には、事業所による初期研修やOJT(同行訪問)などのサポート体制があります。未経験者やブランクのある方でも、先輩ヘルパーと一緒に現場を回ることで、仕事の流れや介護技術を段階的に学ぶことができます。

また、登録ヘルパーも正社員やパートと同様に、年1回以上の法定研修への参加が義務づけられています。主な研修内容は、認知症ケア、虐待防止、感染症対策、プライバシー保護、ハラスメント対策など。勤務時間が短くても、こうした研修を通じて基礎的な知識や対応力を維持することが求められます。

事業所によっては、介護技術向上のための勉強会や資格取得支援制度を設けているところもあり、働きながらスキルアップを目指すことも可能です。

③相談・フォローの仕組み

登録ヘルパーは個別訪問が中心のため、他職員と顔を合わせる機会が少なくなりがちです。業務中に迷ったときや利用者さまの状態変化を感じたときに、すぐ相談できる環境が整っているかが大切です。

サービス提供責任者や管理者への連絡手段、勤務時間外の対応ルール、緊急時の判断基準などを事前に聞いておくと、業務中の不安を減らせます。定期的にミーティングやオンライン面談を実施している事業所もあり、孤立せず働ける環境づくりに力を入れているところもあります。

④訪問エリアと移動手段

担当エリアの範囲や、どの地域を中心に訪問するかを把握しておくと、自宅からの距離感や移動時間をイメージしやすくなります。

徒歩・自転車・バイク・車など移動手段の指定や交通費・ガソリン代の支給方法も事業所ごとに異なります。天候や季節によって移動時間が変わることもあるため、自分の生活圏に合った働き方を考えましょう。

⑤仕事量と稼働の目安

「登録した時間帯にどの程度仕事が入るか」は、事業所の利用者数や地域によって差があります。 時間帯によって依頼が入りやすい・入りにくいなどがあり、希望する勤務時間とのバランスを知っておくと計画を立てやすくなります。

また、資格や経験も稼働に影響します。身体介護ができる人やより上位の資格を持っている人は担当できる業務の幅が広く、依頼を受ける機会が増えやすい傾向にあります。

登録ヘルパーの働き方は事業所ごとに違いが大きく、契約や勤務条件を丁寧に確認しておくことで、長く続けやすい環境を選ぶことができます。
面接では給与額や勤務日数だけでなく、日々のサポート体制や相談のしやすさにも注目してみましょう。

7. 転職活動とJobSoel(ジョブソエル)の活用

医療・介護分野での転職には、専門の求人情報プラットフォームであるJobSoel(ジョブソエル)の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

JobSoelでは、全国の医療福祉に関する職種の求人情報を検索できるほか、施設の雰囲気や具体的な取り組みを知ることができます。
新しい職場での働き方や成長のチャンスを具体的にイメージしながら転職活動を進められるので、安心して検討できますよ。
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8. まとめ

登録ヘルパーは、介護の現場で欠かせない存在です。
子育てや家族の介護、定年後の再就労、副業など、働く目的が多様化する中で、この形を選ぶ人は年々増えています。働く人の生活環境や体力、家庭の事情によって、求める働き方はさまざまです。
登録ヘルパーは、その中で「今の自分にできる範囲」から始められる働き方として、介護の現場との関わり方を柔軟に選びたい人に広がっています。

【参考】

厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06kekka.pdf

厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001048087.pdf

介護労働安定センター「介護労働実態調査」
https://www.kaigo-center.or.jp/

厚生労働省「訪問介護」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123917.pdf

厚生労働省「社会保険適用拡大」
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/

厚生労働省job tag
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/133

厚生労働省「介護人材確保に向けた取り組み」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18898.html

 

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